エネルギーの伝達媒体である流体としての作動油の役割は非常に大きいものです。作動油の持つ性質を把握し、油圧システムの機能を有効に発揮させることが大事です。また、作動油の種類の使い分けや管理をすることも必要です。
作動油には石油系作動油、難燃性作動油としての合成油系作動油と水性系作動油、最近の無公害としての生分解性作動油がありますが、最も多く使用されている石油系作動油について解説していきます。
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作動油の性質
・作動油に要求される一般的な性質
作動油に一般的に要求される性質としては、以下の項目があげられます。
① 適度の粘性を持ち、温度に対して変化しにくい(粘度指数が大きい)こと。
② 低温でも流動性を持っていること。
③ 高温でも変質しにくいこと。
④ 物理的、化学的に安定であること。
⑤ 潤滑性の良いこと。
⑥ 防錆能力のあること。
⑦ 非圧縮性を有すること。
⑧ ゴムや塗料を侵さないこと。
⑨ 消泡性の良いこと。
⑩ 水やゴミなどの不純物を分離できること。
・粘度
作動油の粘度は、油圧機器の特性である容積効率、機械効率、圧力損失、漏れなどに影響を与え、作動油選定の重要な因子になります。粘度は、絶対粘度μを密度ρで除した動粘度νで表し、単位はcm2/secのストークス(St)が用いらています。通常はこの1/100の単位であるmm2/secのセンチストークス(cSt)が多く用いられています。
作動油の種類を表すのに粘度グレードが用いられ、油温約40℃の時の動粘度(cSt)を粘度グレード(VG)として定められています。例えば、VG32の作動油は、油温40℃の時の動粘度が32cStの作動油となります。
・粘度と油温との関係
粘度は油温により変化し、動粘度ー油温特性図で表されます。また、油温に対する粘度の変化の度合を示すものとして粘度指数(V.I)が用いられています。V.I値が大きいほど、油温変化による粘度の変化が小さいことになります。
V.I = (L-U)/(L-H)x 100
U : 粘度指数を求める試料油の40℃における動粘度(cSt)
L : 100℃において試料油と同一動粘度を持つ粘度指数0の油の40℃における動粘度(cSt)
H : 100℃において試料油と同一動粘度を持つ粘度指数100の油の40℃における動粘度(cSt)
・作動油中の空気
作動油は常温において体積比で5~8%の空気を溶解しているので、圧縮性や圧力の伝搬速度に影響を与えています。
空気は、圧力の変化あるいは油温の変化によって膨張あるいは収縮するので、作動油の容積も膨張または収縮するのです。このため、作動油は完全非圧縮性流体ではないのですが、その度合いが小さいので、通常は非圧縮性流体として扱っています。
・酸化安定性
作動油は、酸化により劣化しますが、高温度、金属、塵埃、水などによる触媒作用により劣化が促進されます。特に炭化物やスラッジを生成し、油圧機器の作動を不円滑にし、摩耗を増大させる要因にもなります。
酸化の度合は酸価で評価し全酸価(mgKOH/g)で表します。すなわち、作動油1gを中和させる水酸化ナトリウムKOHの量mgで表します。酸価が増加すると粘度なども増加し、作動油の劣化を促進しますので、作動油交換の基準にもなります。
・水分
作動油の水分は50ppm(0.005W%)程度は含まれており、常温での飽和水分量は約200ppm程度です。このため、多少水分が増加しても白濁現象は生じないものです。また、温度が高いほど飽和水分量は大きくなるので、高い温度で使用していた時には透明でも、油温が下がると白濁する場合があります。
水分は潤滑性、錆の発生、粘度に悪影響を与えますので、水分混入には注意する必要があります。

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作動油の劣化と使用限界
作動油は使用状態によっては、粘度などの性状変化による劣化、ゴミやスラッジあるいは水分などの汚染物混入による劣化が生じて、油圧装置の機能あるいは故障の原因となります。このため、使用限界の判断基準があり、基準により作動油のクリーニングや換油など処置をする必要があります。
・性状変化の限界
作動油の性状が変化し使用限界に達した場合には、作動油を交換する必要があります。性状変化を判断する項目としては、
①比重
②色相(作動油の色見本による)
③引火点
④全酸価
⑤粘度
などが用いられ、これらの変化量により、使用限界を定めています。
作動油の性状変化による使用限界を下表に示します。特に粘度および全酸価の変化には注意しなければなりません。
分析項目 | 使用限界(変化量) |
---|---|
比重(15/4℃) | 0.05 |
色相 | 2 |
引火点(℃)COC | 60 |
全酸価(mgKOH)/g | 0.2 |
粘度(cSt) | 10~15 |
・汚染物混入限界
作動油の劣化は異物混入による場合が極めて多いものです。作動油の汚染管理(ろ過)を行うことで、劣化を防ぐことも可能になります。
ゴミの汚染物混入による使用限度は、ゴミの数による計数法(NAS1638汚染基準)や重量法(NAS汚染度基準)などで判断します。
・水分混入限界
作動油中の水分混入限界を下表に示します。水分が多くなると白濁しますが、油温が上がると飽和水分量が多くなり透明になる場合があります。
装置の条件 | 使用限界 |
---|---|
作動油が水分により白濁した場合 | 直ちに交換 |
装置内の作動油が循環してタンクに戻る回路で、長時間運転を停止することがない装置 | 500ppm |
配管が長い装置などで、回路内の作動油が完全に循環しないような装置 | 300ppm |
長時間運転を停止しておく装置(安全装置等)または、回路内の作動油がほとんど移動しないような装置、あるいは精密な装置 | 200ppm |
(1ppm=1/1000000) |
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