油圧ポンプ
油圧ポンプの種類
油圧ポンプの種類としては、機能的な分類として回転数が一定の場合にポンプの吐出量が一定の定容量形と、圧力により変化する可変容量形があり、機構的な種類として歯車ポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプがあります。
油圧ポンプの種類を下表に示します。
吸込特性(キャビテーション特性)
油圧ポンプにおいては、吸込圧力(抵抗)が大きくなり、真空度が高くなると空気の分離によるキャビテーションが発生します。キャビテーションが発生すると、吐出量は減少し、より進むと異常音を発生します。キャビテーションは次の状況で発生します。
①油温の低下により粘度が増大した場合
②サクションフィルタが目詰まりした場合
③吸込み部から空気を吸い込んだ場合
粘度特性
油圧ポンプは粘度が低くなるとポンプの内部漏れが増大して吐出量は減少します。一方、粘度が高すぎると内部漏れは少なくなりますがキャビテーションの影響から吐出量は減少します。容積効率の変化は押しのけ容積の大小で異なり、押しのけ容積が大きいほど、低粘度には強く、高粘度には弱い傾向にあります。
各種ポンプの比較
歯車ポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ各種ポンプの比較を表に示します。
歯車ポンプは建設機械、ベーンポンプは工作機械や産業機械などに使用され、ピストンポンプは、主に産業機械や航空機などに使用されていました。しかし、最近は作動油の管理が進んでいることもあり、性能的に優れているピストンポンプが多く使用されている傾向にあります。
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圧力制御弁
圧力制御弁は物体を動かすための力の制御や回路の安全弁としての役割、あるいは順序動作や省エネとしての回路のアンロード機能などを持っています。目的に応じたいろいろな種類がある制御弁です。
種 類 | 機 能 |
---|---|
リリーフ弁 | 圧力制御弁の代表的なもので、ポンプやシリンダなどの油圧装置の最大圧力を規制し、過度の圧力から保護すると同時に、油圧系統の圧力を一定に制御する場合に使用されます。定容量形ポンプを使用する場合には必ず使用されます。 |
減圧弁 | 回路内の一部の圧力を低圧にしたい場合に、一部の回路圧力を減圧する圧力制御弁です。 |
シーケンス弁 | 複数のシリンダなどの作動順序を回路圧力により制御したり、パイロット圧力を確保するための抵抗弁として使用する圧力制御弁です。 |
カウンタバランス弁 | 荷重を油圧で支える目的で、シリンダに背圧を持たせて自重落下を防止する場合に使用される圧力制御弁です。 |
アンロード弁 | ポンプの無負荷運転(動力の消費を低減するとともに、油温上昇も防止する)などに使用される圧力制御弁です。 |
ブレーキ弁 | 慣性力の大きなアクチュエータの停止時に使用される圧力制御弁です。 |
圧力スイッチ | 油圧回路の圧力を検出してスイッチを作動させ、電気回路の開閉(ON-OFF)を行う圧力制御弁です。 |
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流量制御弁
物体を動かすには力と共に速度の制御が必要となります。この速度を一定にしたり、速くしたりするためには、ポンプから送られてきた圧油を速度に見合った流量に調整する必要があります。この流量を調整する働きをする制御弁が流量制御弁です。
種 類 | 機 能 |
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絞り弁 | 絞り弁は最も単純な流量制御弁で、流路面積をスロットルで絞ることで、流れ量を調整するものです。構造が簡単で調整範囲も広く、操作も簡単です。絞り部前後の圧力差の変化および温度変化の温度による粘性の変化で制御流量が変動するので、負荷変化の少ない場合や制御精度をあまり必要としない場合に用いられるものです。 |
流量調整弁 | 流量調整弁は負荷が変動あるいは温度が変動する場合でも、絞り部前後の圧力差を一定に保持する圧力補償機能や温度補償機能を備え、高精度な流量制御を可能にした制御弁です。構造は複雑ですが、いろいろな使用条件でも対応できる代表的な流量制御弁です。 |
デセラレーション弁 | 絞り弁の絞り面積をカムなどで変化させ、連続的に流量を制御する制御弁です。 |
フィードコントロール弁 | 流量調整弁とデセラレーション弁を組み合わせた高精度の連続的流量制御を行う制御弁であり、特に工作機械の送り装置に有効です。 |
パイロット操作流量調整弁 | 流量調整弁の流量調整用ハンドル機能を、本体に組み込まれた油圧シリンダで行い、アクチュエータの加速・減速をスムーズにショックなく行うための制御弁です。 |
パワーセービング弁 | 流量制御弁の無駄な圧力損失を少なくするために、流量制御弁入り口のポンプ圧力が流量制御弁出口の負荷圧力の変化に応じて変わることができるように特殊リリーフ弁を組み合わせた制御弁です。負荷感応形とも呼ばれています。 |
ニードル弁 | 圧力計などの小容量管路の止め弁(ゲージコック)として、あるいはパイロット管路の流量制御に使用される針状の制御弁です。 |
流量制御の3つの方式
流量制御の方法には基本的な3つの方式があります。
・メータイン制御
機械を動かすシリンダの入り口部の流量を直接制御する方式で、シリンダの入り口圧力は常にリリーフ圧力になっています。一般的に採用されている方式ですが、シリンダの負荷が負の場合(リフターが下降する時、負荷で引っ張られるような場合など)には、使用できません。この場合は荷重の自走あるいは落下防止策が必要です。
・メータアウト制御
機械を動かすシリンダの出口部の流量を制御する方式で、シリンダに背圧を掛けてブレーキを掛けながら速度制御を行います。
効率は悪いが、負荷がマイナス荷重である場合などに適しています。
ただし、シリンダの入り口圧力は常にリリーフ圧力となるため、負の荷重の大きさによっては、シリンダの出口圧力、すなわち、流量制御弁の入り口圧力が、リリーフ弁のリリーフ圧力よりも高くなる場合があるので、注意が必要です。
・ブリードオフ制御
シリンダの入り口流量を制御するために、ポンプから送り出される圧油量の一部を直接タンクに逃がす(還流)方式で、効率の良い方式です。しかし、ポンプの吐き出し量が油温などで変化した場合には、還流量は一定ですが、シリンダへの流入量が変わり、精度の良い流量制御にはならないので、注意が必要です。
方向制御弁
方向制御弁はポンプから送り出された圧油の流れの方向を制御することで、物体の発進・停止、動く方向の上下左右への変化あるいは位置の保持のための制御弁です。方向切換弁と呼ばれるものが主体ですが、位置保持等に使用されるチェック弁(逆止弁)も方向制御弁の種類に含まれます。
方向切換弁の分類
方向切換弁の分類を以下に示します。
・基本的な弁形式
基本的な弁形式は、スライドスプール形、ロータリースプール形、ポペット形の3形式があります。この形式の中で多く使用されているのはスプール形式です。スプール形式は機能的に優れていますが、本体とスプールの間に隙間があるので、漏れ(内部漏れ)が生じる欠点もあり、漏れ防止上からポペット形が最近多く使用されるようになっています。
・スプール形方向切換弁の機能上の分類
方向切換弁は機能上の種類が多いので、次のように分類されています。
①接続ポートの数および切換位置の数
②スプール形式
③切換方法(手段)
電磁切換弁
電磁切換弁は、流れの方向を制御するために、電磁石(ソレノイド)を用いてスプールを切り換える方向切換弁です。通常電磁弁と呼ばれ、油圧装置には最も多く使用されています。
・ソレノイドの種類
ソレノイドは、交流用ソレノイドと直流用ソレノイドの2種類があり、両者のソレノイドの長所と短所を記します。
①交流用ソレノイド
長所:電源が得やすく、切換速度が速い(0.03s程度)。
短所:切換音が大きく、長い時間通電を続けたり、スプールが異物で
固着すると、焼損する危険がある。
②直流用ソレノイド
長所:ソレノイドの焼損はなく、切換音も小さい。
短所:直流電源を必要とし、切換時間が長い(0.1s程度)。
③交直変換形⇒直流ソレノイドを交流電源で作動させるもの。
長所:電源(交流)が得やすく、焼損しない。
短所:交流から直流への変換素子が必要なことから高価になる。
電磁パイロット切換弁
電磁パイロット切換弁は、大流量用として、あるいは、流量は比較的少ない場合でも、切換え時の衝撃を緩和させるために用いられます。
・性能
①最大流量と最大圧力:最大流量は口径11/4、最大圧力31.5MPa用で1100L/min、口径4”、圧力21Mpa用で2400L/minのものがあります。
②切換速度:切換速度はパイロット圧力などで変化し、口径3/4で0.05~0.3S程度です。
③圧力損失:口径3/4、500L/min、粘度30CStで0.7MPa程度です。
シャットオフ電磁弁
シャットオフ弁はポペット形の2方向電磁切換弁で、圧油流れのON-OFF制御にノーリーク形として使用され内部漏れを少なくした構造となっています。
・性能
内部漏れに重点が置かれているので、圧力損失や最大流量特性は一般の電磁弁と比較して劣ります。
その他の切換弁
方向切換弁の操作方法は、電磁操作あるいは電磁パイロット操作が主流ですが、この他に手動操作およびカム操作によりスプールの切り替えを行う切換弁があります。なお、手動操作切換弁は主に建設機械や産業機械で使用されており、切換弁を並列に結合した多連式も多くあります。
・手動操作切換弁
手動操作切換弁は、スプールの位置を決める機構として、ノースプリングデテント形、スプリングセンター形およびスプリングオフセット形があります。
・カム操作切換弁
カム操作切換弁は、切換弁が動く物体に固定されたり、あるいは動く物体により切換操作を行う場合に使用されます。
・チェック弁
チェック弁は、一方向のみに流し、逆方向の流れを防止する逆止弁です。チェック弁には、インライン形とアングル形があります。チェック弁の性能は、圧力損失、許容漏れで表し評価します。
・パイロットチェック弁
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サーボ弁
サーボは命令どおりに動かすこと(奴隷)を意味しており、電気その他の入力信号(命令)に従った流量または圧力を制御する弁です。
電気-油圧サーボ弁
サーボ弁は信号電流で動くトルクモータ、トルクモータで作動する油圧増幅用ノズルフラッパ機構、油圧増幅で圧油の流れ方向と流量を制御するスプール、スプールの変位を検知するフィードバックスプリング等から構成されています。
メカニカルサーボ弁
メカニカルサーボ弁は、弁スプールの一端は弁本体(ボディ)の外に取出しスタイラスが取付けられ、スタイラスはバネでテンプレートに押し付けられています。テンプレートが動くとスタイラスはテンプレートに沿って動き、この動きがスプールを操作することになります。
このようにメカニカルサーボ弁は、スタイラスを機械的に動かすことで圧油の流れを制御する弁です。
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油圧アクチュエータ
油圧アクチュエータは、油圧システムにおいて流体のエネルギーを機械的な仕事に換える重要な要素です。
油圧アクチュエータの種類としては、機能的に分類して次の3種類があります。
①油圧シリンダ : 直線往復運動
②油圧モータ : 回転運動
③揺動モータ : 揺動運動
油圧シリンダ
油圧シリンダは、直線運動を行う油圧アクチュエータです。ピストンロッドが片側から出ている片ロッドシリンダと、両側から出ている両ロッドシリンダに分類できます。片ロッドシリンダには、単動形と複動形があります。単動形は、油の出入口がピストンの片側にあり、片側だけに圧力が作用してシリンダを動かします。ピストンの復帰は、ばねや自重落下によって行われます。複動形は、油の出入口がピストンの両側にあり、両側に圧力が作用することで往復運動を行います。
油圧シリンダのロッド径に対してストロークが長すぎると、荷重の大きさによっては、ロッドが歪曲する座屈現象が生じます。このため、座屈の起きないシリンダの選定が必要です。
油圧モータ
油圧モータとは、回転運動を行う油圧アクチュエータです。基本的な油圧モータの構造は、油圧ポンプと類似しています。油圧モータは、回転運動式のギヤモータ、ベーンモータ、ねじモータ、往復運動式のピストンモータに分類できます。
アキュムレータ
油圧で使用する流体は、非圧縮性流体であるので、圧力油として蓄えておくことは出来ません。そのため、電気の蓄電池に相当する機器として、アキュムレータがあります。
アキュムレータは、流体エネルギーの蓄積(蓄圧)、脈動の除去、サージ圧力の吸収、回路の漏れ補充などに用いられ、油圧装置の機能向上や省エネルギー対策用として必要な機器です。
アキュムレータは、気体の圧縮性を利用する「気体圧縮式」、加圧に錘を利用する「重錘式」、そして加圧にばねを利用する「ばね式」があります。しかし、現在使用されているものは気体圧縮式がほとんどです。
アキュムレータ取扱い上の注意事項
(1)アキュムレータを使用する場合は高圧ガスを取り扱うので、高圧ガス取締法により十分注意が必要です。
(2)アキュムレータに使用する気体は、不活性ガスとしての窒素ガスです。酸素を含む空気の使用は危険ですので注意が必要です。
(3)気体(窒素ガス)を封入する場合は、容器内に圧油がない状態で、高圧窒素ボンベなどから、減圧弁を介して徐々に封入します。
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