4-1)電気の基礎知識

電気とはどういうものか

物質はすべて電気をもっている

 すべての物質は、きわめて微小な分子または原子の集合体であり、さらに原子は、正電荷をもった原子核と負電荷をもった電子という微粒子から成り立っています。

原子は、原子核を中心として、いくつかの電子が一定の軌道の上を自転しながらぐるぐる回っている構造になっています。

普通の状態では、物質は正電荷と負電荷が釣り合っている

 原子の原子核は、正電荷をもつ陽子と全く電荷をもたない中性子で構成され、陽子は外側を回っている電子と同じ数になっています。

1個の陽子のもつ正電荷の量と、1個の電子のもつ負電荷の量の絶対値は等しいことが知られています。

普通の状態では、性質の異なる正電荷と負電荷の量が等しいので、物質の外部には電気の性質が現れないことになります。

電気の性質は自由電子のはたらきによる

 物質によっては、原子核を回っている電子のうち、一番外側を回っている電子は原子核との結び付きが弱く、原子核を離れて物質の中を自由に動き回る性質があり、これを”自由電子”といいます。

このように、原子から負電荷をもった電子が飛び出ると、その分、正電荷が余分になるので、物質は「正に帯電した」といいます。

外部から自由電子が原子に飛び込んでくると、その電子のもつ負電荷が余分になるので、物質は「負に帯電した」といいます。

こうした自由電子の過不足によって物質は電荷を帯びます。

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電流とはどういうものか

自由電子の流れを電流という

 正電荷をもった物体Aを負電荷をもった物体Bとを金属線でつなぎ合わせると、金属線を通って物体Bから物体Aに負電荷をもった電子が移動します。

これは、物体Aは自由電子が不足している状態であり、物体Bは自由電子があまっている状態であるため、物体Bのあまっている自由電子がどんどん物体Aの不足を補おうとして、動くからです。

このような自由電子の流れを”電流”といいます。

電流の方向は自由電子の流れと逆とする

 電流の流れる方向とは、正電荷の流れる方向となっています。

昔、電子が発見される前には、正電荷の流れる方向が電流の方向と定められていましたが、現代において、電流の正体である負電荷をもった自由電子の流れと比較してみたら、方向が逆だったことがわかりました。

これでも特に不都合がないので、自由電子の流れと逆の方向を電流の方向となりました。

電流の単位は”アンペア”で表す

 電流とは、自由電子の流れですから、1秒間にどれだけの電子がその部分を通るかで、電流の大きさを表します。

1秒間に通過する電荷の量を電流の単位として、これをアンペア(A)といいます。

電気の量を測る単位をクーロンといいます。そして、1秒間にその部分を1クーロンの電荷が通ることを、”1アンペアの電流が流れた”といいます。

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電圧とはどういうものか

電流は電位の高い方から低い方に流れる

 電流を水の流れにたとえてみます。水槽Aに水を満たすと、高い位置にある水は、低い位置にある水よりも位置のエネルギーが大きいため、水位の高い水槽Aから水位の低い水槽Bに向かって、水が流れます。これは水位の差、つまり水圧があるからです。

電荷の流れである電流も、全くこれと同じで、この水位に相当するのが電位です。A,B両帯電体の間に電位の差があれば、これらを電線でつなぐと、電流は電位の高い正の電荷を帯びたAから、電位の低い負の電荷を帯びたBの方に流れます。

この正の電荷を帯びたAと負の電荷を帯びたBとの間にある電位のさを、”電圧”といいます。

電位の差である電圧によって、物質を形づくる原子内の自由電子が移動し、電流が流れます。

電圧とは、1クーロンの正電荷のもつ位置のエネルギーともいえます。

電圧を測る単位には、”ボルト(V)”が用いられます。

電池は電流を流し続ける力をもっている

 電池の正(+)極と負(-)極の間に電球をつなぐと、電流はいつまでも流れ続けます。

これは、電池の正極と負極の間の電位差、つまり電圧は、電流が流れても無くならないからです。というのは、電荷が電流によって運び去られて中和されても、電池内部の化学作用によって新しく補充されて、電圧を消滅させずに維持しようとするはたらきが、電池(乾電池や蓄電池)にはあるからです。このように電流を流し続けようとするはたらきを”起電力”といいます。

 

直流と交流

 電圧や電流は、大きく分けると直流と交流に分けられます。

直流(DC)

 DC(Direct Current)ともいい、時間が経過しても大きさと向きは一定です。乾電池が代表的なもので、プラス(+)とマイナス(-)の極性が決まっています。直流電源で動作する機器は、+-の極性が違っていると動作しない場合や故障する原因になるので注意が必要です。

交流(AC)

 AC(Alternating Current)ともいい、時間とともに大きさと向きが周期的に変化します。代表的なものに家庭のコンセントからの電源があり、交流電圧の大きさは100Vです。コンセントは、+・-の極性の指定はなく、プラグを左右どちらに差し込んでも家庭電化製品は動作します。なお、日本の場合は、地域によって周波数が異なります。だいたい富士川を境に東日本は50Hz、西日本は60Hzとなっています。電気機器は、周波数が違うと速度や明るさ、熱量などいろいろな問題が発生する場合がありますが、特に周波数の指定がないものは、日本全国どこの地域でも使えます。

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周波数と電波

周波数

 周波数とは、1秒間に同じ波形が繰り返す周期的な変化の回数をいい、fで表し単位にはヘルツ(Hz)を用います。また、1回の変化に要する時間を周期といい、Τで表し単位は秒(s)を用います。

 したがって、周波数fと周期Τとの間には次の式が成り立ちます。

  f = 1 / Τ 〔Hz〕

 家庭に供給されている交流電圧は、東日本では1秒間に50回電圧の大きさや向きが変化しますので、周波数は50Hz、周期は0.02sになります。なお、人間の可聴周波数(聞こえる周波数)は個人差がありますが、20Hz~20kHzの音を聞くことができます。

電波

 導体中に高周波電流を流すと高周波電流と同じ周波数の電界と磁界の波ができます。これを電磁波といいます。電波とは、周波数が3000GHz以下の電磁波をいい、光と同じ速さで空間に広がっていきます。また、周波数fと波長λとの関係は次式になります。

  λ = (3 x 108) / f 〔m〕

 したがって、電波の波長は周波数によって決まり、周波数が高い時には波長が短くなります。

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電気回路とは

電気の通る専用道路を電気回路という

 乾電池と豆電球およびスイッチを電線でつないでスイッチを閉じると、豆電球に電流が流れ、豆電球は明るくつきます。

そこで、このときの電流の流れる道を調べてみると、乾電池の正極から豆電球を通り、スイッチを通って乾電池の負極に戻ることがわかります。

このとき、乾電池内を通って電流が流れるので、どこにも切れ目はありません。このように電流の流れる専用道路を”電気回路”あるいは、単に”回路”といいます。

電源と負荷と制御

 電気回路がどのように構成されているか調べてみると、

まず、乾電池のように、起電力をもっていて、引き続いて電流を流すもとになるもの、つまり電気を供給する源を”電源”といいます。

また、この電源から電気の供給を受けていろいろな仕事をする装置を”負荷”といいます。

豆電球は、電気エネルギーを光エネルギーに変える装置で、この回路では負荷になります。

次に、スイッチのように、これを操作することによって、電気回路に電流を流したり流さなかったりして、電流をコントロール(制御)する機器を”制御機器”といいます。

そして、電源と負荷および制御機器とを結ぶ、電流を通る道をかたちづくるものを”配線”といい、電線などが用いられます。

家庭用電気器具、たとえば、テレビのコードをコンセントに差し込んだとすれば、コンセントが電源で、コードが配線、テレビが負荷電気回路となります。

 

導体・抵抗体・絶縁体(誘導体)

電流の流れやすい物質を導体という

 金属のように電流が流れやすい物質を”導体”といいます。

自由電子を多くもっている物質は、電流をよく通しますので、導体となります。

導体としては、たとえば、金属、酸類・アルカリ類の水溶液があり、金属でも、金・銀・銅・アルミニウムなどが代表的です。

導体は、電気回路の通り道である配線材料に使われ、銅線、銅帯などが一般に用いられています。

電流が流れにくい物質を抵抗体という

 導体ほど自由電子が多くなく、電流が流れにくい物質を抵抗体といい、ニクロム線、鉄クロム線、マンガニン線などがあります。

ニクロム線、鉄クロム線が、抵抗体の発熱作用を利用した電熱器の材料としてよく使用されています。

抵抗体の電流の通りにくさを利用して、電気回路に流れる電流の調整に用いたのが、抵抗器です。

電流がほとんど流れない物質を絶縁体という

 自由電子が少なく、ほとんど電流が流れない物質を”絶縁体”といい、”誘電体”ともいいます。

ゴム、ビニール、ガラス、雲母(うんも)などの絶縁体は、電流が流れないという特性を利用して、絶縁物として用いられています。

たとえば、家庭電気器具によく用いられているビニールコードは、導体である銅線にビニールをかぶせたものです。銅線だけでは、電流を流すと感電やショート事故を起こしかねないので、絶縁物としてビニールで外側を被覆し、安全に使えるようにしています。

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半導体とは

半導体は導体と絶縁体の中間の特性をもつ

 物質でも、電流が流れやすい導体と電流がほとんど流れない絶縁体とでは、電流の通しやすさに極端な差がありますが、特殊な物質、たとえばシリコン、ゲルマニウムなどは、導体と絶縁体の中間ぐらいに電流を通しやすしので、”半導体”と言われています。

たとえば、純粋なシリコンの結晶にホウ素、アルミニウムなどの元素を加えると、正電荷をもった”P形半導体”ができ、アンチモン、リンなどの元素を加えると負電荷をもった”N形半導体”ができます。

半導体の機能をもつダイオード(スイッチング素子)

 ダイオードとは、P形半導体とN形半導体を接合したもので、P形半導体側をアノード(正極)、N形半導体側をカソード(負極)といいます。

ダイオードのアノード側に電池の正極をつなぎ、カソード側に電池の負極をつなぐと、ダイオードはほとんど抵抗がゼロになり、電流が流れます。これを”順方向電圧”といい、ちょうどスイッチが閉じたのと同じ状態になります。

電池の正極と負極の接続を逆にすると、ダイオードは非常に大きな抵抗値を示し、電流が流れません。これを”逆方向電圧”といい、ちょうどスイッチが開いたのと同じ状態になります。

半導体の例(トランジスタとIC)

 トランジスタとは、P形半導体とN形半導体を交互に接合した3層の半導体をいい、その組合せにより、”NPN形””PNP形”とがあります。

NPN形トランジスタの場合、ベースとエミッタに電圧を加えないとコレクタとエミッタ間の抵抗は大きくなり、電圧を加えると抵抗は小さくなります。

この半導体の性質を利用してシーケンス制御を行うこともあります。

最近では、集積化して1つの論理機能をもつ回路をいくつか組み合わせ、1つのパッケージに納めた”IC(集積回路:Integrated Circuit)”が用いられています。

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電気器具の接続の仕方

電気器具を1列につなぐことを直列接続

 電気器具のつなぎ方には、”直列接続””並列接続”とがあります。

電気器具を次々に1列につなぐ方法を”直列接続”といいます。

たとえば、豆電球2個を直列に接続するには、まず、豆電球Aの端子1を電源(電池)の正極に、端子2を豆電球Bの端子3につなぎ、端子4は電源(電池)の負極に、順次つないでいきます。

豆電球Aと豆電球Bを直列に接続すると、電流の通り道、つまり回路は1本道ですから、同じ大きさの電流が流れます。

電気器具を並べてつなぐことを並列接続

 電気器具のそれぞれの両端をいっしょにして、横に並べてつなぐ方法を”並列接続”といいます。

たとえば、豆電球2個を並列に接続するには、豆電球Aの端子1と豆電球Bの端子3をひとまとめにして、電源(電池)の正極につなぎ、豆電球Aの端子2と豆電球Bの端子4をひとまとめにして電源(電池)の負極につなぎます。

並列接続では、豆電球Aと豆電球Bに、電池の同じ電圧がかかります。なお、電流の大きさについては、豆電球Aと豆電球Bの種類が違う場合は異なります。

家庭用電気器具は、並列に接続して使用

 私たちの家庭では、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、掃除機と、多くの電気機器が使用されています。

これらの家庭用電気器具は、コンセントにコードをつないで使用しています。これは、家庭用電気器具を交流の100Vの電源に対して、並列に接続しているのです。

コンセントには、電力会社から引き込まれた電気が2本の線で配線されています。この2本の線の間には、100Vという同じ電圧がかかっていますので、どの器具もコードをつなげば100Vの電圧がかかります。

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コイルに電流を流すと磁石になる

コイルに電流が流れているときだけ磁石になる

 棒状の鉄(これを鉄心という)に電線をグルグル巻いてコイルとし、スイッチを介して電池につなぎます。

この状態でスイッチを閉じると、電池の正極からコイルに電流が流れ、鉄の棒は磁石になり、近くに置いた鉄片を吸引します。反対にスイッチを開くと、コイルに電流が流れなくなり、鉄の棒は磁石の性質を失い、鉄片を吸引しなくなります。

このように電気を流すことで鉄が磁性を帯びる現象を、電気による磁石ということで、”電磁石”といいます。

電磁石における”右ねじの法則”

 棒状の鉄(鉄心)に電線を巻いた電磁石において、磁極つまりN極およびS極の生じ方は、コイルに流れる電流の向きによって変わります。この電流の方向とN極、S極の生じ方の関係を”右ねじの法則”といいます。

”右ねじの法則”とは、コイルの電流の流れる方向に右ねじの回す向きを合わせると、右ねじの進む方向がN極のできる方向になるということです。

電磁石を応用したのが電磁リレー

 電磁石の鉄片(可動鉄片)に可動接点を取り付け、固定接点と組み合わせたのが電磁リレーです。

電磁リレーは、電磁石の性質を利用して、電気の力で操作をできるようにしたもので、シーケンス制御において制御信号を伝達する主要な機器です。

電磁リレーのコイルにスイッチと電池をつなぐと、これが電磁リレーの操作回路となります。スイッチを閉じるとコイルに電流が流れて電磁石になるため、可動鉄片が吸引され、可動接点が固定接点と接触して閉じます。これを電磁リレーが”動作する”といいます。

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オームの法則

 電気回路の電圧・電流・電気抵抗の3つの間の関係については、1826年にオーム(Georg Simon Ohm 1789~1854年、ドイツ)の実験によって、次のようなことが確かめられました。

 「電気回路に流れる電流は電圧に正比例し、電気抵抗に反比例する」

これを ”オームの法則” といいます。

オームの法則は、抵抗:R〔Ω〕に、電池などによって電圧:V〔V〕を与えたときに流れる電流:I〔A〕を、次の式で表すことができます。

  I = V / R 〔A〕

この式を次式のように変形することができます

  V = R ・ I 〔V〕

  R = V / I 〔Ω

 

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