軸
・回転軸ではたわみ角に配慮する
・高速回転する軸は振動現象を避ける
軸は、回転や直線運動によって動力を伝える機械要素のことです。
軸の役割は、回転体の中心軸や平行移動の基準です。ほとんどの軸が運動に関係することから、運動を繰り返しても変形や破壊の生じない強さが求められます。
より具体的には、軸に加わる三つの荷重を考慮して、疲労破壊に対して十分に余裕のある強度と剛性をもつものを採用する必要があります。
ここで三つの荷重とは、
① 軸に対して垂直にかかる曲げ荷重
② 軸方向にかかる引張・圧縮荷重
③ 軸の回転方向にかかるねじり荷重
になります。
なお、車軸などの用途により、①~③の組み合わせ荷重となる場合もあります。
軸材料を選定する際には、上記の機械的強度のほかに、使用環境に応じて熱膨張係数や耐腐食性などへの配慮が求められることもあります。
軸を使用するときに最も注意しなければならないのは、曲げによるたわみです。たわみが大きくなると、軸の振れ回りや軸受けの片当たりが発生して、機械の故障につながります。一般的な伝動軸の場合、最大たわみ角が1/1000rad以下となる軸径が目安です。
また軸の回転がある速度に達すると、軸の振動が急に大きくなることがあります。この振動現象の要因は二つあります。
一つは回転による軸のたわみ変形やねじり変形が復元するときに減衰せず振動する場合です。
もう一つは回転速度が軸の質量や長さなどによって決まる固有の値(固有振動数)に近いため共振する場合です。
後者の振動が激しさを増す現象(共振)が起こる回転速度を危険速度と呼びます。いずれの場合も極度の変形を繰り返すため、破損に至ります。
この振動を避けるための方法は、軸の太さを変更して危険速度を変えることで、仕様回転速度と危険速度を離すことです。
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軸 受
・軸受のメリット、デメリットを正しく理解する
・使用条件に最もふさわしい軸受を選定する
軸受とは、軸の回転を支え、回転による摩擦を減らす機械要素のことです。
軸受は、すべり軸受ところがり軸受の2種類に分類できます。すべり軸受は、軸を面で囲い、適切な潤滑によって軸の回転を受ける構造です。ころがり軸受とは、玉やころを用いて転がりによって荷重を支える構造です。
機械設計を行う上では、使用する条件に合わせて適切な軸受を選定することが重要になります。
そのためにも、軸受けの種類・用途・荷重条件を知る必要があります。そして、それぞれの軸受のメリット、デメリットを正しく理解しましょう。
実際に軸受を選定する場合は、すべり軸受では荷重や回転数がPV値の許容範囲内であることを確認します。PV値とは、軸受の圧力(P)とすべり速度(V)の積で表した値で、通常は軸受メーカーのカタログに記載されています。
一方、ころがり軸受を選定する場合は、規格品の型式の決定と、定格寿命を求めることが重要になります。型式は基本番号と補助記号で表されます。経験、実績、スペースなどから軸受型式を仮選定して寿命計算を行い、寿命が満足しているかを確認して最終的な型式を決める方法がよく用いられます。その他、使用条件などにより軸受荷重、回転数、寿命等を導き出して、寿命計算から軸受内径を求めて型式を決定します。
仕様に合った機械を設計するためには、軸受も使用条件に最もふさわしいものを選ぶ必要があります。そのためには、軸受メーカーのカタログや技術資料を活用して、必要であれば問い合わせを行い、適切な軸受を選定するようにしましょう。
種 類 | メリット | デメリット | 特記事項 |
---|---|---|---|
すべり 軸受 | ・長寿命 ・省スペース ・静音 ・耐衝撃性 ・低価格 | ・安定した潤滑が必要 ・メンテナンスが面倒 ・標準化されていない ・高温、低温での使用 に向かない | ・自己潤滑性がある 含油軸受や 樹脂系軸受 などもある ・潤滑のタイプは、 流体潤滑 混合潤滑 境界潤滑 固体潤滑 に分けられる |
ころがり 軸受 | ・規格化されていて入手性が 良い ・グリース潤滑可能で簡単 ・メンテナンスが簡単 ・起動摩擦係数が小さい ・高温、低温での使用が容易 | ・騒音、振動が大きい ・異物の侵入に弱い ・寿命に限界がある ・許容荷重がサイズの 割に小さい ・耐衝撃性、減衰性に劣る | ・アンギュラ玉軸受は、 ラジアル荷重と 一方向のアキシャル荷重を 受けられ、複数個で 予圧をかけて用いられる |
その他の軸受
種類 | 解説 | 特徴 |
---|---|---|
動圧軸受 | 軸の回転運動で流体膜の上に浮く軸受 | 一定範囲内の速度限定で高精度 加工、安定動作が難しい |
静圧軸受 | 油または空気を軸受に導き荷重を支える軸受 | 非接触高速高精度回転が可能 使用条件、環境が限定 |
磁気軸受 | 磁気の吸引または反発力を利用した軸受 | 非接触高速高精度回転が可能 大型で高価 |
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軸と穴のはめあい寸法
歯車の中心穴と軸を適切に締結するためには、両者の大きさをどのくらいの寸法にすればよいのでしょうか。これは意外と難しい問題であり、たとえば歯車の中心穴の直径を30mm、軸の直径を30mmにすればよいというものではありません。製品の寸法は1つの数値ではなく、あらかじめ許された誤差の限界である許容範囲を規定されています。大きい方の限界を最大許容寸法、小さい方の限界を最小許容寸法といい、両者の差を寸法公差といいます。
どんな製品でも、寸法誤差を完全に±0にすることは不可能です。そのため寸法公差をあらかじめ設定して、その寸法公差内に入るように製作していきます。
穴と軸のはめあいにおいて、軸の直径が穴の直径よりも小さい場合の差をすきま、逆に穴の直径より大きい場合の差をしめしろといいます。はめあいには、穴の最小許容寸法よりも軸の最大許容寸法が小さいすきまばめ、穴の最大許容寸法よりも軸の最小許容寸法が大きいしまりばめ、穴の最小許容寸法が軸の最大許容寸法より大きく、かつ穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が小さい中間ばめの3種類があります。
穴の寸法を基準として軸の寸法公差を管理するはめあいを穴基準、軸の寸法を基準として軸の寸法公差を管理するはめあいを軸基準といいます。穴と軸の加工は軸の加工の方が容易であるため、一般には穴基準が用いられています。
キー
はめあいだけでは締結力が小さい場合、歯車が回転している間に軸が空回りしてしまうおそれがあります。そのような場合には、両者の間に物理的に接触するキーと呼ばれる小部品が用いられます。とてもシンプルな部品で簡単に分解できます。別名で、「マシンキー」とも呼ばれます。キーを用いた締結には、軸側にキーをはめこむキー溝と呼ばれる溝を設ける場合と、キー溝を設けずにそのままはめ込むものがあります。一般的に動力伝達用の軸にはキー溝が設けられます。また、軸に取り付けられる機械的要素側をボスと呼びます。
キーの大きさは軸の太さにより決められ、キーと軸との関係性はJIS B1301にて決められています。つまり軸の太さが決まれば、自動的にキーの大きさも決まります。長さはボス側の長さにより制約されることが多いです。
また、キーが受けられる力は、それぞれの材料のせん断応力により異なります。キーはねじり切るような力がかかり、これに対し押し返す力が材料により変わるという意味です。また、キーの引っ張り強度は600N/mm2以上でなければなりません。
軸や回転体にはキーを入れる溝があるものと無いものに分けられており、溝が無いタイプは軽荷重用に、溝があるタイプは動力伝達用に利用されています。また、沈みキーのほとんどが平行キーですが、それだけでは電動トルクを伝えることができない場合に使用されるのが、半月キーや勾配キーです。
キーの種類
・沈みキー
沈みキーは重荷重用(動力伝達、高速回転用)で、平行キーと勾配キーに分けられます。平行キーは勾配がなく、最も凡用的なものです。溝にすっぽりと入り込むような形となり、軸の側面から見るとキーがすべて入っているのがわかります。勾配キーは勾配があることで抜けにくいのが特長です。側面から見ると勾配の部分が飛び出て引っかかっているのがわかります。どちらも軸とボス両方にあるキー溝にはめ込んで使用するものです。
・半月キー
キー溝の加工が容易で、先の部分に向かって細くなっているテーパー軸でよく使用されます。通常では、テーパーの形状に合わせて正確にキー溝を加工するのは難しいですが、半月キーであれば、フライスカッターによって容易に加工できます。伝達能力は低いのがデメリットです。
・接線キー
キーのなかで最も強く固定できます。キー溝を軸の接線方向に作り、勾配1/60~1/100の2つのキーを互いに反対向きに打ち込んだものです。また、ボスや軸を弱めないというメリットもあります。伝達能力が高く、圧延機、重荷重や回転方向が正逆に変化する交番トルクの軸に最適です。
※圧延機とは、ロールによって材料などに圧力を加えて,薄くしたり、細く延ばしたりする加工を行う機械です。
・平キー
ボスに勾配1/100のキー溝があり、軸には、キー座として平らに加工して使用します。伝達力は、キーと軸の接触圧力によって発生する摩擦の力と摩擦のトルクです。主に軽荷重用で使用されます。
キーとキー溝のはめあい
キーとキー溝のはめあいには、軸およびボスのキー溝の寸法許容差を選択することによって、滑動型、普通型、締込み型の3種類に区分されます。
形 式 | 特 徴 | 適用するキー |
---|---|---|
滑動形 | 軸方向を軸とボスが相対的に動けるようにするときに用いる。 キーがボスと一緒に動かないように、キーを固定ねじで軸に固定する。 | 平行キー |
普通形 | キーを軸のキー溝にはめておき、これにボスをはめ込む結合。 | 平行キー 半月キー |
締込み形 | キーを軸のキー溝に固くはめておき、これにボスを締め込む結合。 または、組付けられた軸とボスの間にキーを打ち込む結合。 | 平行キー 勾配キー 半月キー |
キーの設計基準
・キーの強さから求められるトルク
普通の角キー、丸キーの強さとしては、面圧強さとせん断強さがあります。面圧強さから求められるトルクをTp、せん断強さから求められるトルクをTsとすると
Tp = (d・t・ℓ)/ 2 ・P
Ts = (d・b・ℓ)/ 2 ・ τ
ここに、P:許容面圧(MPa)
τ:許容せん断応力(N/mm2)
ここで、TpとTsの比は一般に、P≒2τ、b≒3t(b≧2t)なので
Tp/Ts = (t・ℓ・P)/(b・ℓ・τ) ≒ 2/3
つまり、せん断強さから求められるトルクが面圧強さから求められるトルクより大きくなります。したがって、キーの強さから求められるトルクとして面圧強さから求められるトルクの値を用いればよいということになります。
なお、一般には軸径に対応する規格で定められたキーを用いれば、そのキーは十分な強さを持っています。したがって、キーの強度計算をすることは極めて少なくなっています。
・キーの許容面圧(P)の値(安全率)
Pの値については、機械の運転状態、使用材料およびキーとキー溝の加工精度によって決まりますが、一般的には次の値まで許容されます。
P = σy / (SF1 x SF2)
SF1:荷重の種類に対する安全率
静荷重のとき ・・・・1.5
繰返し荷重のとき・・・2.5
交番荷重のとき・・・・4.0
衝撃荷重のとき・・・・3.0~6.0(衝撃の程度による)
SF2:キーとキー溝の加工精度に対する安全率
加工精度の良いとき(締込み形)・・1.0
通常の加工精度(普通形)・・・・・1.6
加工精度が悪いとき(滑動形)・・・2.2
σy:キー、軸、ボスの内で最も弱い材料の降伏点
スプラインとセレーション
・スプライン
スプラインは、キーに相当する歯を軸に直接加工したもので、ボスにもこれにはまりあう溝を掘ってあります。キーに比べて伝達動力が大きく、また、軸方向にボスを摺動させることができます。
種 類 | 歯の形状 | 特 徴 |
---|---|---|
インボリュートスプライン | 歯の軸直角断面がインボリュート曲線をなすもの。 | 角形スプラインにくらべ強度・精度・コストいずれも優れている。 1)作動する場合。自動的に同心になる。 2)20°低歯の歯車切削工具を用いて、容易に高精度のものを製作できる。少量製作にも便利。 3)穴基準方式のため、ブローチ・ピニオンカッタなどの製作工具の種類を最少にできる。 4)歯元の強さが大で、同径の角形スプラインに比較して動力伝達能力がかなり上回る。 |
角形スプライン | 歯の側面が中心軸に平行平面であるスプラインをいう。 | インボリュートスプラインにくらべ強度、はめあい精度など劣っており、インボリュート形式に移行しつつある。 ただし次のような箇所には適する。 1)動力取出軸 2)中心合せ精度を厳しく要求する箇所(スプラインの小径、歯の側面研摩可能なため) |
インボリュートスプライン
角形スプライン
サイクロイド曲線とインボリュート曲線
サイクロイド曲線は基円に外接する転円上の一点が描く軌跡であり、インボリュート曲線は、その転円の直径が無限大、すなわち直線になったとき、その上の一点が描く軌跡のことです。
サイクロイド曲線
インボリュート曲線
・セレーション
セレーションは、スプラインの歯の高さを低くして歯数を多くしたもので、また、一般には滑動させないで固定用として使用され、スプラインよりも伝達トルクが大きい。セレーションには歯面の形状によって、三角セレーションおよびインボリュートセレーションがあります。
三角セレーション | 目が細かい三角形 歯数が多く、歯たけが低いので、比較的小径のものに適している。 精度が悪く、工作の手数がかかるのであまり使用されない。 | ||
インボリュートセレーション | 歯がインボリュート曲線をなすもの。 高精度のものを容易に製作できる。 一般の機械の軸と穴とを固く結合する場合などに、広く使用されている。 |
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ピン
ピンは、キーに比べて小負荷の場合の結合用、または補助用として用いられる機械要素です。大きな負荷が加わったとき破断し、軸を守る安全装置として用いられることもあります。
ピンにはピンの軸に直角方向の負荷Fがかかります。
この時ピンに加わるせん断応力をτとすると
F = 2 x π/4 x d2 x τ
⇒ d = √(2F/πτ)
となります。
また、ピンに生ずる曲げ応力をσbとすると
M = σbx(πd3/32)
⇒ d = 3√(4Fℓ/πσb)
ただし、ℓ=ℓ1 + 2ℓ2
ピンの使用材料から許容曲げ応力、許容せん断力を設定すると、必要なピンの直径dが求められます。
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