5-5)機械加工

 機械加工とは、工作機械や切削工具を用いて材料(金属や樹脂など)を目的の形状に加工することを言います。様々な形状のものを高精度で作り出すことができるところが特長です。

 製作する形状に応じて、加工方法や用いられる工作機械が異なり、旋盤・フライス盤・ボール盤・研磨機・NC工作機械・マシニングセンタなどの工作機械を使用して、金属や樹脂部品を加工していきます。

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切削加工

切削の動き

 切削とは、工具を用いて工作対象物からその一部を削り取ることです。この場合、大きくは「切削」と「送り」という二つの動きが必要となります。
切削は対象物から一部を削り取る動きで、基本的にバイトなどの工具が一直線上に移動することで行います。
 一方、送りとは工具を移動させて、ほかの部分の切削を可能にする動きです。たとえば、ある一直線上で切削を行った後、工具を切削方向と垂直に送ることで、新たな面の切削が可能となり、これを繰り返すと平面を生み出すことが可能になります。

加工と抵抗

 加工では、工具と工作対象物が触れあい、力が干渉しあうため抵抗が生じます。工具によって生じる抵抗の力が異なる点に配慮する必要があります。
たとえば、バイトによる切削では対象物の材質や切削面積、バイトの種類などによって異なります。中でも切削面積は抵抗に大きく関係するため、加工時に注意しなければなりません。
また、ドリルによる穴開け加工では、トルクと送りについて抵抗を考える必要があります。トルクとはねじりの強さのことで、「ねじりモーメント」などと呼ばれます。一方、送りはドリルを押し進める方向の動きです。
 穴開け加工においては、対象物の材質をはじめ、ドリルの種類(刃先の形状)、ドリルの回転速度、送りの速さによって抵抗の値が変化します。
 加工の現場では、抵抗による影響を考えながら加工を検討することで、品質や効率、工具の耐久性を追求することが可能となります。

加工と速さ

加工の現場では品質管理とともに作業効率が重要な課題です。機械加工では、加工の速度をアップさせることで効率の向上になります。
しかし、機械の速度をやみくもに上げればよいというものではありません。速度が増すことで抵抗が増したり、熱変形が生じるといったマイナス面が出る恐れがあります。また、加工速度を上げることでバイトの寿命が短くなる場合もあります。これではバイトの交換頻度が増えて、加工単位あたりのコストが高くつくことになりかねません。そのため、加工に際しては、速度と精度、そして工具の寿命に配慮することが大切です。

加工と温度

 抵抗や速度で取り上げたように、切削などの加工時、工作対象物と工具が触れあうことで熱が生じます。これによって対象物内の温度が上昇し、加工精度や工具の耐久性に影響を及ぼすことがあります。
中でも問題となるのは、前述したとおり加工時の速度と加工面積です。加工速度が速いほど熱が発生し、加工面積が大きいほど摩擦が大きくなり温度が上昇します。機械加工では常に温度の変化に注意しながら、作業を進めるように心がけましょう。
 機械加工の温度管理で重要な役割を果たすのが、切削油(切削剤)です。
工作対象物と工具との摩擦を減らす役割を果たします。また、加工時に発生
した熱を冷ます、加工時の削りくずを洗い流すといった用途でも欠かせ
ません。
 かつては油性のものが中心でしたが、環境保全に対する意識の高まりから、現在では水溶性のものが主流になっています。また、機械加工では切削油を大量に使用することから、循環タイプの装置を用いることで、一度使用したものをろ過した上で再使用する場合が大半です

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切削加工の種類

 切削加工とは、金属などの材料(工作物)と工具とを相対的に動かしながら、削ったり穴を開けたりして希望の形にする技術です。切削加工には、大きく2つに分けて、加工する工作物を固定して工具を回転させる「転削」と、工作物を回転させる「旋削」とがあります。

旋盤(せんばん)加工

 旋盤加工は、円筒形状の工作物を回転させながら、主軸に固定したバイトという刃物状の工具に当てることによって加工する技術です。旋盤を用いて、円筒形状の工作物の外周を円形や先細形状(テーパ)にしたり、穴あけや、穴を広げる中ぐり、ねじ切り、さらに溝を削りながら最後まで切断する突切りなどを行います。

汎用旋盤

 作業者が送り操作や工具の交換を手動で行う旋盤加工です。チャックとよばれる把持具で固定した工作物を高速回転させて加工します。旋盤は英語で「rathe(レース)」といい、卓上型ベンチレースでは、小さな部品加工を作業台の上で行うことができます。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

NC旋盤(CNC旋盤)

 加工条件をコンピュータで制御する旋盤加工で、初心者でも一定以上の品質で加工ができます。複数の工具を自動交換できるものもあり、作業の効率化が推進されました。
また、長い棒状の材料から金太郎飴のように同一形状の工作物を製造するために、従来はカム式の自動盤が使用されていましたが、近年では、カムに替わってプログラム制御によって加工を行うNC自動旋盤が登場しています。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

バイト

バイトは、旋盤などで加工物の切削に使用される刃物のことです。種類は多岐にわたりますが、基本としては外径の切削に用いる「片刃バイト」、溝削りなどに用いる「突切りバイト」、穴をつくるための「中ぐりバイト」が頻繁に用いられます。
なお、現在は刃先の研磨などの手間を省くため、刃先が交換できる「スローアウェイ」のバイトが普及しています。これはバイトホルダーと刃先のチップに分かれていて、カッターナイフの刃のようにチップの切れ味が落ちると交換できるタイプです。

 

チャック装置

チャック装置(もしくはチャック)は、旋盤やボール盤の「つかみ」部分を指します。旋盤であれば、加工物を固定する装置であり、ボール盤ではドリルの刃を固定する部分です。
チャック装置には機械構造で締め付ける「メカニカルチャック」や、磁石で固定する「マグネットチャック」、真空状態で固定する「真空チャック」など、機構や用途の違いによってさまざまな固定方法があります。メカニカルチャックでは、三つの爪で固定するタイプと四つの爪で固定するタイプがあります。
旋盤やボール盤で精度の高い加工を行うには、加工物や工具を確実に固定し、大きな負荷がかかっても微動だにしないチャック装置の存在が欠かせません。

フライス加工

 回転軸に取り付けたフライス盤という切削工具を回転させて行う加工です。固定した工作物に工具を断続的に当てて切削を行うため、工作物表面を平面や曲面に加工できるほか、穴開け、みぞ削りなど、多様な加工が可能です。
 フライス盤には、工具を取り付ける主軸の方向によって、横形と立形があるほか、本体が門のような形状をした門形などの種類があり、正面フライス、エンドミル、溝フライスなどの工具を用いて、目的の形状に工作物を加工します。

汎用フライス

 汎用フライスは、作業者が手動で操作するフライス加工です。工具と工作物とを相対的に動かす際、工具の位置や送り、速度、切り込み量などの加工条件を作業者が判断して設定します。手動ならではの微細かつ高品質な仕上がりを実現します。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

NCフライス(CNCフライス)

 NCフライスは、コンピュータで加工条件を制御して行うフライス加工です。NC(Numerical Control)は数値制御の意味で、かつてはパンチカードなどを用いた時代もありました。現在では、機械に内蔵されたコンピュータでNC制御を行うCNC(Computerized Numerical Control)が主流となり、CNCフライスを含めてNCフライスとよばれることが多くなっています。自動運転で行えるため省力化につながるほか、3D CAD/CAMソフトウェアを使った加工プログラムで制御することにより、さらに複雑な形状の加工にも用いられています。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

マシニングセンタ

 マシニングセンタとは、NC制御を備えた工作機械で、フライス加工だけでなく、複数の主軸に別個の工具を取り付けて多軸構成とした複合機です。
マシニングセンタを用いると、直線運動や回転運動を次々に組み合わせて、穴開けや曲面加工などといった種類の異なる切削を連続的に行い、より複雑な形状の加工ができます。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

NC歯車加工機

 コンピュータを内蔵したNC歯車加工機では、時計から自動車まで、私たちの身の回りの多種多様な形状や用途に合わせた歯切り加工を行い、歯車の製造を行います。

参考動画 ・YouTube1 ・YouTube2

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