2-2)鉄鋼材料

 不純物を非常にわずかしか含まない鉄を純鉄(pure iron)、炭素(C)を0.2%程度以下含んでいる鉄を単に鉄。鉄と約2%以下の炭素との合金を炭素鋼(carbon steel)と呼びます。

 鋼はほかの金属材料に比べて、大量生産が容易で、価格も安く、また合金元素を加えたり、熱処理をしたりすることによって、その性質を大幅に変えることができるので、用途が広く使用量も極めて多量に使用しています。

 工業的に鋼を作るには鉄鉱石(主成分は酸化鉄)をコークスや石灰石とともに溶鉱炉(blast hearth furnace)に入れ熱風を送ると鉄鉱石は還元されて銑鉄(pig iron)ができます。銑鉄中には、Cが3%以上含まれています。次にこの銑鉄を鋼くずなどとともに転炉(converter)、平炉(open furnace)あるいは、電気炉(electric furnace)に入れ余分なCを除くと鋼ができます。ただし、機械構造用鋼や工具鋼は大部分電気炉で作られます。でき上がった溶鋼は鋳型(mold)に鋳込まれて鋼塊(steel ingot)となりますが、最近は連続鋳造(continuous casting)によって長い鋼塊を作製する場合が多くなります。これらの鋼塊は圧延、線引などの工程を経て、板、棒、型鋼、線などになります。

 溶鋼を製品の形に作られた鋳型に注入して製作される鋳物を鋳鋼(cast steel)または、はがねいものと呼びます。

 

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炭素鋼

 炭素鋼は、炭素の含有量によって、低炭素鋼(C<0.30mass%)・中炭素鋼(0.30mass%≦C≦0.50mass%)・高炭素鋼(C>0.50mass%)に分けられます。一般に、C(炭素)の増加とともに引張強さは増すが、伸びやじん性および溶接性は低下します。したがって、現在溶接構造用として広く用いられているのは低炭素鋼です。

SS材(Steel Structure:一般構造用圧延鋼材)…SS400/ SS490/ SS540

SSというのはSteel Structureの頭文字からきたもので、構造用の鋼であることを意味します。SSのあとにつく400というのはこの材料で保証されなくてはならない最低の引張り強さをMPa(N/mm2)で表記したものです。規格としては、引張強さが400~510N/mm2のものを言い、材料記号の数字部分はSS材の場合、下限の引張強さを示しいます。

鉄鋼材料にとって、炭素は強度や硬度を決める最も重要な成分の一つです。SS400の炭素含有量については、JIS規格には規定がないが、おおむね0.15から0.2%前後のものが多く、低炭素鋼(軟鋼)といえます。低炭素のため、硬度が高くないかわりに加工性が優れている材料でもあります。SS400は成分を保証したものではなく、強度(最低の引張強さ)を保証したものであるため、炭素が一定の量だけ含有していると言えない材料でもあります。

SM材(Steel Marine:溶接構造用圧延鋼材) …SM490A,B,C/ SM490YA,YB /SM520

もともとは船舶に用いる鋼材の溶接性を高める目的で開発されました。MはMarineの頭文字からきている。以前は船はリベット構造だったが、現在は溶接構造に変わり、そのために用いる溶接用鋼材ということで開発されました。溶接船用に限らず、SS材とともに多くの工業用途で用いられています。

中・低温用の鋼板で、化学成分はSS材とよく似ていますが、低温じん性を改善し、保証したタイプもあります。なお、低温側は-10℃、高温側の使用限界温度は350℃。形状は鋼板、鋼帯、形鋼、平鋼となります。

B種とC種では衝撃試験を行っているタイプで、低温じん性を保証しており、脆性破壊を起こさない鋼材。降伏比(降伏点/引張強さ×100%)が高いことで知られるSMY種もあります。これはNbを添加したSM材。A種は耐候性に優れたタイプで、強度に優れています。最新のJIS規格では11種類についての規定があります。

SN材(Steel New:建築構造用圧延鋼材) …SN400A,B,C/ SN490A,B,C

SN材は、JISでは5種類が規定されており、建築物、建造物の構造材料としての使用が想定されている為、耐震性や溶接性についての指標が組み込まれており、破壊されるまでの変形能力、炭素当量、溶接割れ感受性、耐衝撃性を見るためのパラメータが細かく設定されています。以前はSS材に建材としての耐震性を見るためのパラメータが組み込まれていましたが、建造物用としてのSN材が登場すると、そうしたパラメータはSS材から除外されました。

建築用途では、SS材、SN材、SM材などが使われ、これらが併用されることもありますが、SN材はこの中でも耐震・溶接についての規定と、寸法精度が高くなっているため、建材として優れた性質をもつ規格材となっています。ちなみに、SN材の鋼板やH形鋼におけるマイナス側の許容差は、すべての寸法でSS材等よりも厳しい0.3mmと設定されています。

溶接性については、これに大きく影響する炭素当量のほか、溶接割れ感受性、成分としては不純物元素であるリン、硫黄の量を低く規定してあり、鉄骨造建築物などで使われている一般的な溶接で、溶接欠陥の発生を防止できるような規格構成になっています。

SN400にはA種、B種、C種の三種類、SN490にはB種、C種の二種類が規定されており、材料記号の末尾にUTがついているのは(SN400B-UTなど)、超音波探傷試験を行った鋼板、平鋼を意味しています。B種、C種は、ガイドライン鋼材と呼ばれる耐震建築溶接構造用鋼材の元ともなっているもので、これがSN材の主要材となります。

SN材の場合、末尾についているA、B、Cの記号は使用される部位(用途)を示しています。Aは溶接の無い補助用のもの、補助部材として使われることが想定された鋼種で、Bは主要構造部材や溶接のある構造部材として、Cは溶接だけでなく、厚さ方向特性も要求される部材に使われることが想定されています。

成分については、炭素量のほか、鋼材の強度面に影響するPやSの値が低くコントロールされています。また、厚さによって炭素量の規定が異なるという特徴があります。

SS400とSN400の違い

SN材は建築用の構造材ですが、SS400に代表される一般用構造材のSS材も建材用途としてよく使われています。

SS400とSN400の違いとしては、SS400は一般構造材としての利用が想定されており、溶接性を見るための炭素当量や、炭素含有量についての規定がありません。SS400の成分規定は、リンと硫黄のみとなり、このため、主要構造部材として使うには不安が残ります。

SN400は補助材として使われることが想定されている弱めのSN400Aであっても、鋼材の性能を大きく左右する炭素量の上限が設定されており、また板厚の公差(許容差)についても規格上に規定されているため、建築などの安全性や精度の求められる用途に向いています。

元来、建築の基準では降伏比が一定以上にならないよう、つまり低降伏比についての基準が設けられているが、これは降伏比が一定以上にならないようにすると、地震などが起きた際に、鋼材が折れる前に変形する為、ある程度のエネルギー吸収が可能となり、想定外の破損や崩壊の危険性を減少させます。

SN材の末尾にCとついているC種には耐ラメラテア性能と呼ばれる、いわゆる厚さ方向の特性があります。B種と比べて単に成分上の違いだけでなく、厳格な製造管理が求められる鋼材です。このタイプのSN材は、厚さ方向における割れの起きる可能性はB種よりも低くなります。

ラメラテアとは鋼材同士を溶接した箇所、T継手や十字継手などの箇所で、板厚方向に引張応力がかかった際に、板の表面に平行な「亀裂」が入ってしまう現象です。板厚方向に引っ張る力がかかる用途では、この現象の発生により構造物の崩壊にもつながります。大型の部材でこうした力がかかるものについては、耐ラメラテア性能を持つ鋼材を用いる必要があります。

 

補足説明

引張強さとは、

鋼材を引っ張り、破断するまでの応力を言います。

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