5-4)潤滑油

潤滑油の種類

 潤滑油には、機械の回転速度をはじめ、機械の接触圧力などによって、さまざまな種類があります。また、使用する場所によって適した種類が決められています。最適な「油」を最適な方法で使用しないと、潤滑油本来の効果が発揮されませんので、注意して選定するようにしましょう。
種類によって性質や性能が異なる潤滑油。使用する機械の部分や用途に応じて、さまざまな種類があります。

 種   類       用途 ・ 特徴
マシン油マシン油は、潤滑油の中でも使用の用途が幅広く、添加剤が一切含まれていないのが特徴です。さまざまな機械の軸受や回転摩擦部分の潤滑油として用いられるのが一般的。原油の種類によって、品質が異なるのも特徴のひとつです。潤滑油の分類としては、並級潤滑油に分けられます。
タービン油タービン油は、蒸気タービンをはじめ、水力タービン、ターボ形送風機など、各種タービンの高速軸受部分の潤滑に用いられます。また、圧縮機など、各種機械油圧作動部分の潤滑にも用いられます。タービン油の種類は、無添加タービン油と添加タービン油の2種類。無添加のタービン油は、水との分離性に優れているのが特徴。一方、添加タービン油は、酸化の安定性や消泡性、防錆性、水分離性に優れているのが特徴とされています。
スピンドル油スピンドル油は、主に軽荷重高速機や小型の電動機、紡績機械などの高速で回転する部分に使用されるのが一般的です。粘度・荷重ともに低い潤滑油である点が、スピンドル油の特徴です。
ダイナモ油ダイナモ油は主に、高速で回転する大型の電動機や発電機、送風機、通風機などに使用されます。
シリンダー油シリンダー油は主に、蒸気機関のシリンダーや弁に用いられます。また、シリンダー油は、高粘度の性質を持っており、温度や荷重の高い部分に用いられる油として活用されています。
軸受油軸受油はその名の通り、機械の軸受の潤滑に用いられます。サビを防ぐ性質である防錆性が備わっています。
冷凍機油冷凍機油は主に、冷凍機の潤滑に用いられます。鉱油系の潤滑油を冷却した際に、流動する最低温度が低いため、アンモニアなどの冷媒への安定性が良いことが特徴。また、冷凍機油は、鉱油系とアルキルベンゼンなどの合成油系に分けられます。
油圧作動油油圧作動油には、タービン油を基油とし、添加剤が加えられています。油圧装置の圧力媒体や油圧ポンプなどの作動油として用いられています。一般的に油圧作動油は、粘度が低いのが特徴。また、酸化安定性や水分離性、消泡性、防錆性に優れているのも特徴とされています。その他、粘度や温度特性、耐摩耗性、耐火性などを発揮する種類もあるため、油圧ポンプの形式や使用条件によって使い分けることができます。油圧作動油の種類は、R&O形の一般作動油、高粘度指数の低流動点作動油、耐摩耗作動油、難燃性作動油などが挙げられます。
ギヤ油ギヤ油は主に、一般的な機械や圧延機など減速歯車の摩擦軽減と冷却用の潤滑剤として、各種ギアに使用されています。極圧剤を添加したものと、無添加の種類があります。極圧剤添加タイプは耐摩耗性や耐焼きつき性が特徴として加えられます。一方、極圧剤無添加タイプの特徴としては、酸化安定性や水分離性、消泡性、防錆性に優れている点が挙げられます。
圧縮機油圧縮機油は、圧縮機のシリンダーや軸受などの潤滑に活用されます。種類は往復動形とスクリュー形用に分けられます。カーボン生成が極めて少なく、酸化安定性や防錆性に優れている点が特徴。スクリュー形用は、同じく酸化安定性や防錆性、水分離性に優れている点が特徴とされています。
しゅう動面油しゅう動面油は一般的に、工作機械のすべり案内面の潤滑に用いられます。しゅう動面油の種類は、案内面専用のものと油圧作動油と兼用のタイプとに分けられます。滑り面で発生する振動現象への耐性や防錆性、酸化安定性に優れているのが特徴。

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潤滑油の粘度

 一般的に、エンジンの始動性や冷却作用、油圧作動での能力を高めるには、低い粘度のものが適しているとされ、一方、吹き抜けや摩耗の防止、密封作用としては、高い粘度のものが適しているとされています。
また、粘度にはその高低に対して番号が付けられています。粘度が低くサラサラなほうが、その番号が小さくなります。使用する条件をしっかりと考慮した上で、粘度の程度を決め、適した潤滑油を選択するようにしましょう。

高粘度

 粘度が高いと潤滑油は「ドロドロ」の状態になります。油膜が強くなるため、強い負荷のかかる機械に使用するのが適しています。ただし、粘度が高すぎると抵抗が大きくなってしまうため、粘度の管理はしっかりと意識するようにしましょう。

低粘度

 粘度が低いと潤滑油は「サラサラ」になります。潤滑油の抵抗が小さくなることから、高速の機械に使用するのが適しています。ただし、粘度があまりにも低いと、油膜が切れやすくなるなど、潤滑効果が低くなってしまうため、気をつける必要があります。

粘度指数

 粘度は温度によって変化します。たとえば、機械の回転部や軸の支点部で摩擦が起こると、熱が発生します。熱が発生すると同時に、潤滑油の温度も高くなってしまいます。温度が高くなると、粘度が低くなりサラサラした状態になる性質を持っているため、油膜が弱くなってしまいます。結果的に、金属同士の接触が増えてしまい、焼き付きなどの現象を引き起こしてしまいます。このように、温度による潤滑油の粘度変化の度合いは、「粘度指数」と呼ばれる数値で表されます。

粘度グレード

 潤滑油は、高粘度と低粘度のものを混ぜ、いろんな粘度の潤滑油を調合することができます。粘度は、国際標準化機構(ISO)によってグルーピングされています。
40℃における潤滑油の動粘度(流体そのものの動きにくさを表す度合い)の範囲を定め、その中心値を粘度グレードと呼びます。粘度グレードはISO VG2~ISO VG1500の間で、18グレードに分類されています。
機械には使用する潤滑油の粘度グレードが指定されているケースがありますので、最適なオイルの粘度(ISO VG)を選ぶようにしましょう。

温度管理の重要性

 潤滑油の粘度は温度によって変化しますので、潤滑油を使用する場合は、温度管理をしっかりと行う必要があります。潤滑油の温度が上昇し、粘度が低下してしまうと、油はサラサラした状態になってしまい、期待する潤滑の効果を発揮できなくなってしまいます。予期せぬ機械トラブルが起きてしまわないよう、以下のポイントに気をつけ、しっかりと温度管理をするようにしましょう。

 ・潤滑を必要とする部分の温度が高くなってしまう場合は、油の量そのもの
  を多くする。
 ・潤滑油を循環させて給油している場合は、オイルクーラーの設置や、
  大きな容量のオイルタンクを使用するなど、潤滑油の冷却を心がける。
 ・実際に機械で使用する際の潤滑油の温度を測定することで、適切な
  温度管理を行う。

潤滑油の粘度について押さえておきたいポイントは、「潤滑油によって粘度に違いがある」「潤滑油の温度が上昇すると粘度は低下しサラサラの状態になる」「温度によって生じる粘度変化の大きさを示す”粘度指数”を意識する」といった点といえるでしょう。

粘度管理の欠かせないポイント

 機械には適した潤滑条件というものがあります。一般的には、機械が稼働しているときの温度に合わせた粘度の潤滑剤を使用することになります。そうすると、機械が稼働していないときの潤滑油の温度は下がってしまうため、結果的に粘度も上昇してしまいます。最適な粘度で潤滑剤を使用するためには、機械のウォーミングアップをし、粘度を下げた上で、機械を稼働することになります。
消費エネルギーを抑えることを考えると、ウォーミングアップの時間は短縮したいもの。そのためには、粘度指数が高いもの、要するに、温度による粘度の変化が小さいものを選ぶことが効果的なのです。粘度指数が高いものは、広範囲の温度変化に耐えられるため、ウォーミングアップの時間が短縮でき、結果として、省エネルギーにつもながります。潤滑油によって粘度指数はさまざまですので、こういったポイントも考慮しながら、最適なものを選ぶようにしましょう。

 

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