3-7)溶接欠陥の防止と補修

 溶接構造物の使用目的や設計条件、さらには溶接部にかかる荷重や継手の重要性などによって溶接部にはそれぞれの性能、品質が要求されます。このような性能、品質を損なうものを溶接欠陥といいます。

 溶接の計画、施工、管理に当たっては、このような有害な欠陥が発生しないように配慮するとともに、発生した有害な欠陥を正しい手順によって除去、補修しなければなりません。溶接部のみならず、母材などの欠陥についても同様に取り扱わなくてはなりません。

 

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溶接欠陥の種類

表面欠陥

 溶接工程は、適切な溶接設計に基づき、図面通りに接合することが原則となりますが、溶接部の外観や強度といった「溶接品質」を担保することが必須となります。ここでは、溶接品質を損なう代表的な表面欠陥をご紹介します。
なお、「溶接部外観検査基準(JASS 6-20011)」では、それぞれの表面欠陥に対する管理許容差や限界許容差が詳細に定義されており、欠陥に該当するか否かの判断には精度の高い検査が求められます。

・ピット

 溶接金属内部に発生したガス孔が、ビード表面に放出されたときに穴となって固まった表面欠陥を「ピット(開口欠陥)」と呼びます。一方、ビード内部のガス孔は、「ブローホール」と呼ばれる内部欠陥です。ともに発生原因として、シールドガスの不良や脱酸材の不足、母材開先面の油分や錆、メッキなどの表面付着材、材料中の水分などが挙げられます。

・アンダーカット

 アンダーカットは「母材または既溶接の上に溶接して生じた止端の溝」とJISで定義されています。一般的に溶接電流や溶接速度が過剰に高いことが発生原因となります。また、ウィービングの幅が大きすぎても、アンダーカット発生の原因になるため注意を要します。

・オーバーラップ

 母材表面にあふれ出た溶融金属が、母材を溶融しないまま冷えると発生します。一般的に、溶接速度が低いため、溶着金属量が過剰になり発生します。また、すみ肉溶接で発生する場合は、過剰な溶融金属が重力で垂れ下がり発生します。溶接条件の見直し(溶接速度を高くする、溶接電流を減らすなど)による対策が必要です。

・余盛不足

 余盛りとは、「開先又はすみ肉溶接で必要寸法以上に表面から盛り上がった溶着金属」とJISで定義されています。一般的に溶接速度(熱源の移動速度)が高いなどの理由で、開先表面部に充てんされた溶接金属が不足し、発生します。

・表面割れ

 溶接直後の高温状態で溶接部に発生するひび割れのことです。「凝固割れ」「液化割れ」に大別され、凝固割れは凝固時に発生する割れで、液化割れは多層溶接時に前の溶接層が次の溶接により溶けて発生する割れです。また、発生位置や形状によって、「縦割れ」「止端割れ」「横割れ」「クレーター割れ」などに分類されます。

・アークストライク

 「母材の上に瞬間的にアークを飛ばし、直ちに切ること。またはそれによって起こる欠陥」とJISで定義されています。つまりアーク溶接において、アークの発生不良の跡がその後の溶接で溶かされず、母材に残ったものです。
アークストライクは、母材の割れの原因となる危険性があります。また、大粒のスパッタが付着し跡が残った場合にも、同様の欠陥が発生することがあります。

・ビード蛇行(ビード曲がり、ビードずれ)

 ビードが蛇行することで、溶接線からずれてしまう欠陥です。原因としては、自動供給する溶接ワイヤの曲がりや線ぐせの矯正不良、溶接線と線ぐせの方向が直交しているケースが考えられます。また、ワイヤ供給速度と溶接電流の設定値が対応していない場合にも発生することがあります。

・開先残存

 開先の始点から終点まで、連続したビードが形成できていないために、溶接されていない開先が残っている状態です。ロボット溶接で、始点や終点付近にこの欠陥が発生している場合は、ロボットの制御に問題があることが考えられます。また、アークやガス・ワイヤ供給などが不安定な場合は、ビードの中間地点でも開先残存が発生してしまうことがあります。

内部欠陥

 溶融金属による接合では、溶接特有の現象により、溶接部の内部に欠陥が生じることがあります。
これらの欠陥も、外観品質と同様に溶接強度・溶接品質に影響します。
ここでは、溶接強度・溶接品質を損う代表的な内部欠陥を挙げます。

・ブローホール

 溶融金属が固まる前に、放出できなかったガスが集まり、球状となってビード内部に残 留したガス孔が発 生する欠 陥です。このガス孔が、ビード表面で穴になって固まった場合は、「ピット(開口欠陥)」と呼ばれる表面欠陥になります。

・不純化合物

 溶融金属の中に取り込まれたガスの原子が、母材の原子と結合することで不純化合物になり、ビード内部に残る欠陥です。

・スラグ巻き込み

 溶接中に生成されるスラグが、溶融金属よりも先に凝固することで、溶融金属内にスラグが残る欠陥です。

・溶け込み不足

 溶融金属への入熱不足などによって、目的の位置や深さまで溶け込まない欠陥です。

・融合不良

 溶融金属への入熱不足などによって、先に溶け込ませようとした奥の層のビード(前層ビード)を溶融しきれないことで発生する欠陥です。

・内部割れ

 溶接部に発生するひび割れのことです。内部欠陥に属する代表的な「割れ」には、「溶接金属割れ(ルート割れ)」と「熱影響部割れ(ビード下割れ)」があります。「溶接金属割れ」は、溶融金属内部に発生する欠陥です。また、「熱影響部割れ」は、溶接部が急速に冷却されたことよって母材がもろくなり、すでに凝固した部分の収縮力で発生する欠陥です。

溶接欠陥とその影響

 溶接部の性能に及ぼす溶接欠陥の影響を下表に示します。

この表では変形や残留応力、硬化なども考慮に入れた広義の溶接欠陥(不具合)を示しています。通常は、この表に表面欠陥、内部欠陥として示している割れや溶込み不良などを溶接欠陥ということがほとんどです。

 溶接欠陥は大きさ、形状、発生している位置によって品質に与える悪影響の程度が判断されます。しかし、欠陥の発生している継手にどんな種類の荷重がかかるか、すなわち、引張荷重なのか、圧縮荷重なのか、繰り返し荷重なのか、などの使用条件によって、同じ大きさ、形状、位置の欠陥であっても品質に与える影響の度合いは変わってきます。さらに、その継手を持つ製品の使用環境(腐食環境など)によっても欠陥の影響度は異なります。したがって、欠陥の影響の判断は、単にその種類や大きさ、形状、位置だけでなく、使用条件、使用環境なども考慮して総合的に行う必要があります。

 一般的には、欠陥の先端が丸みを持っているものより先端が鋭い欠陥の方が有害になります。したがって、割れや、溶込み不良および融合不良は重大な欠陥とみなされます。また、変形、著しい寸法、形状の不良や硬化、軟化、ぜい化なども溶接部の性能に影響を及ぼします。

 また、使用条件から見ると静的強さに比べて、疲れ強さ、ぜい性破壊、構造物の延性、また腐食関連では応力腐食割れ、腐食疲れに溶接欠陥の影響が大きいことが示されています。この表は、おおよその傾向を示すもので、表中の△のものでも程度が著しければ〇に近い影響が現れることがあり、また〇印のものでも欠陥が小さいか、または程度が軽い場合には品質への影響は小さくなります。溶接部の欠陥の判定基準は、それらを考慮したものとなっています。

 欠陥を別の観点から区分すると不適当な施工計画、溶接要領が原因で発生するものと不十分な施工管理により発生するものとに分類できます。

 不適当な施工要領による欠陥が発生した場合には、ただちにその施工を中止し、原因を確認するとともに、原因に関連している全継手を検査しなければなりません。

 また、改善された施工要領を適用する場合には、欠陥が再発しないことを十分に確認しなければなりません。

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溶接欠陥の防止対策

 溶接欠陥を防止するために、施工管理上注意すべき全般的な共通基本事項と、代表的な溶接欠陥について、その発生原因と防止対策を説明します。

[1]共通基本事項

 溶接欠陥を防止するには、これまでに述べた溶接の基本に従って適切な溶接施工条件を溶接施工要領所、作業標準などに定め、それらを守って施工すること、管理することがもっとも重要です。それと併せて、以下に示すような諸事項に留意する必要があります。

・溶接工程だけでなく、切断、開先準備、組立・タック溶接など関連前工程の管理。

・溶接材料の適切な乾燥、保管管理。

・溶接機等の使用機器、設備の点検、調整(電流計等のメータ類の校正も重要)。

・安全衛生面を配慮した作業しやすい作業環境の確保(とくに高所、狭部、屋外での作業の場合)。

・溶接技能者やオペレータの教育と、技能・経験・保有技能資格レベルに応じた作業への配置。

・工場全般としての品質意識の高揚と各個人への徹底。

また、次のような場合には溶接欠陥が発生しやすくなるので、管理をより密にして検査も十分に行うなどの注意が必要です。

・母材、溶接方法、溶接材料などで、今まで施工した経験のない新しいものを初めて採用し施工する場合。

・溶接を自動化、機械化、ロボット化してその機器、施工方法が安定するまでの期間。

[2]低温割れの発生原因とその防止法

 低温割れは、約300℃以下で発生する割れをいいます。低温割れは、その形状が鋭い切欠きとなるため、溶接欠陥の中でも特に重大な欠陥であり、高張力鋼の溶接施工において、その防止対策は重要な管理項目です。

 低温割れの発生は、以下の3つの主要因子によります。

①溶接部(熱影響部も含む)の硬さ - 硬くなるほど割れやすい。

②溶接金属の拡散性水素量 - 多いほど割れやすい。

③継手の拘束 - 大きいほど割れやすい。

 したがって、これらの因子を割れが生じない条件にすることが低温割れの防止につながります。

(1)鋼材の化学成分の制限

 熱影響部が硬くなることを防止する手段の一つが、できるだけ炭素当量(Ceq)や低温割れ感受性組成(PCM)の低い鋼材を使用することです。したがって、低温割れの防止には母材となる鋼材の化学成分に留意する必要があります。

(2)溶接金属の拡散性水素量の低減

 溶接金属に拡散性水素が増える原因は、次のような場合です。

・開先に水分、錆、油脂等が付着しているのにそのまま溶接した場合。

・吸湿した溶接材料や乾燥が不十分な溶接材料で溶接した場合。

・高温多湿の作業環境で溶接した場合。

 したがって、開先をよく清掃し、乾燥する・吸湿した溶接材料や乾燥不十分な溶接材料は使わない・低水素系容棒の採用・マグ溶接やミグ溶接のように水素源の少ない溶接方法の適用などが拡散性水素の低減になり低温割れ防止につながります。高温多湿の場所での作業では、溶接前に開先面とその近傍を軽く加熱して表面の湿気を十分に乾燥させることが割れ防止には必要です。

(3)予熱

 予熱をすると溶接後の冷却時間が長く(冷却速度が遅く)なり熱影響部が硬くなる程度を小さくでき、また溶接金属の拡散性水素の放出も促進されます。

したがって、予熱は低温割れ防止のための重要な手段となります。

 予熱を行う溶接で多層多パス溶接を行う場合は、パス間も予熱温度以下に下がらないように施工しなければなりません。

 溶接後の冷却時間が短く(冷却速度が速く)なりやすい厚板溶接やタック溶接、部分手直し溶接などの場合には、より高い温度で予熱しなければなりません。

 溶接入熱を大きくすると冷却速度は遅くなるので同様の割れ防止の効果が得られます。

(4)溶接直後熱

 溶接直後に溶接部を加熱すると冷却時間が長く(冷却速度が遅く)なり、拡散性水素の放出が促進され、割れの発生を防ぐことができます。この溶接直後熱の条件は板厚によって変わりますが、一般的には250~350℃で、30~60分です。加熱はガス炎などが用いられます。加熱後、溶接部を断熱材などで覆ってゆっくり冷えるようにする徐冷を行うと、さらに割れ防止に効果があります。

(5)継手の拘束の低減

 溶接する継手の拘束が大きい場合は割れやすいので、設計面、施工面両方から拘束を小さくするような工夫が必要です。一般的に、板厚が厚くなるほど、平板の継手より立体的になった構造物の継手ほど拘束は大きくなります。

 やむを得ず拘束の大きい継手を溶接する場合は、予熱、直後熱を十分に行うこと、低水素系溶接材料を使うこと、水素源の少ない溶接方法を採用することなどで割れ防止をはかる必要があります。

[3]高温割れの発生原因とその防止

 高温割れは、炭素鋼の場合、凝固点直下から800℃までの温度域で発生します。ときには熱影響部の割れもありますが、ほとんどが溶接金属内の割れになります。

 以下に代表的な高温割れについて、とくに施工面からの防止対策を説明します。

(1)炭素鋼の凝固割れ

 凝固割れは、溶接金属の凝固過程で発生します。その代表例として、梨(なし)形割れ」があります。溶接金属の断面形状が西洋梨に似ていて、その中央で縦長に割れが発生するにで「梨形割れ」と呼ばれます。サブマージアーク溶接やマグ溶接の裏波溶接初層ビード(裏波ビード)で生じやすくなります。溶込み深さ(H)/溶接ビードの幅(W)の値が1以上になると割れが発生しやすいといわれています。したがって、割れを防止するには、H/Wの値が小さくなるようなビード断面形状を得る条件で溶接することが重要です。

そのためには、施工面では以下の割れ防止対策となります。

・開先角度は広くする。

・溶接電流は低くする。

・アーク電圧は高くする。

・溶接速度は遅くする。

(2)オーステナイト系ステンレス鋼の凝固割れ

  オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部は、凝固割れが生じやすくなります。溶接金属のクレータ割れ、縦割れ、横割れ、ミクロ割れが発生する他に熱影響部にも割れが発生する場合もあります。

 溶接金属に発生する割れの防止には、溶接金属中のフェライト量が5~10%あれば効果があるといわれています。したがって、溶接金属中のフェライト量が5~10%になるような溶接材料を選定することが重要です。また、大電流や大入熱の溶接は割れが発生しやすいので避けるべきです。

 熱影響部に発生する割れは、低融点物質の存在による延性低下が原因なので溶接条件の低入熱化や継手の拘束の緩和が割れ防止に有効です。

[4]再熱割れの発生原因とその防止

 低合金耐熱鋼や高張力鋼の溶接部にPWHTを行うと、溶接ビード止端部に再熱割れを生じることがあります。この割れの特徴は、溶接熱影響部(ボンド部)の粗粒域に発生し、細粒域や母材には認められないことです。

割れの防止には、次のような対策があります。

①再熱割れの発生しにくい成分の母材を選択する。

②過大入熱の溶接をしない。

③溶接熱影響部の組織を改善する。(テンパービード法、バタリング法などのビード積層方法を採用する)

④溶接ビード止端部形状が滑らかになるように仕上げる。

⑤PHWTのときの熱応力をできるだけ小さくする。

[5]ラメラテアの発生原因とその防止

 十字継手、T形突合せ継手あるいは多層盛すみ肉継手のように溶接後の収縮力によって鋼板の厚さ方向に大きな引張応力が働く場合に生じる欠陥です。

 母材の熱影響部またはその隣接部において鋼板の圧延表面に平行に階段状に発生する割れで、ラメラテアと呼ばれています。

 ラメラテアが発生する可能性がある継手(溶接によって母材に板厚方向の大きな引張応力が発生する可能性がある継手)については、以下のような対策をとることで、ラメラテアの防止がはかられています。

①母材のS(硫黄)含有量が多いと発生しやすいので、S含有量を低くした鋼材を使用する。例えば、JIS G 3136 のSN鋼材の鋼種C(SN400C、SN490C)がその一つであり、S含有量は0.008%以下と規定されている。

②設計的には、母材に板厚方向の大きな引張応力がかからないような継手形式や開先形状を採用する。

③施工的には、バタリング法(ラメラテアの発生するおそれがある鋼材表面に緩衝域としてのビード肉盛を行う方法)の採用や軟質溶接材料の適用を行う。

④水素(低温)割れが引き金となっておこる場合があるので、その防止対策をとる。

[6]気孔の発生原因とその防止

 ブローホール、ウォームホール、パイピング、ピットなどの気孔は、溶接金属中のCO、H2、N2などのガスが逃げ切らないうちに凝固し、内部に残ったり表面に開孔したものです。

これらの防止には、次のような対策を行います。

①開先部の汚れ防止と清掃

・開先部の水分、湿気、錆、油脂、塗料などが付着しないようにする。付着している場合は除去と清掃の徹底。

・プライマと呼ばれる一次防錆塗料が塗布されている鋼材のすみ肉溶接を行う場合も、継手部(とくに合わせ面)のプライマは除去してから溶接をする。溶接性の良好な無機ジンク系のプライマの場合は、プライマを除去せずに溶接してもよいがこの場合にはプライマの膜厚を一定以下になるように管理する必要がある。

②溶接材料の吸湿管理

・溶接材料は屋内の吸湿しない場所に保管する。

・被覆溶接棒の場合は、種類ごとに乾燥庫で、定められた条件で乾燥・保温を行ったものを使う。乾燥温度が基準より高過ぎると被覆材が変質・劣化するので注意が必要である。

③適正な溶接条件による施工

・溶接電流値などの溶接条件は適正範囲内のもので施工する。とくに過大電流での施工はブローホールが発生しやすい。

・アーク長、運棒も適正範囲内で施工する。

・溶接速度を早くし過ぎると、とくにすみ肉溶接の場合、ブローホールやピットが発生しやすくなる。

④ミグ溶接やマグ溶接などのガスシールドアーク溶接の場合

・適正シールドガス流量で溶接する。マグ溶接では20~35l/min(分)が適正とされている。シールドガス流量が少な過ぎるとシールド不足で、多過ぎるとシールドが乱れて、ブローホールが発生する。風が若干ある場合、シールドガス流量を増やして溶接する場合があるが、50l/min(分)以上に増やすとシールドガスが層流から乱流になり、空気を巻き込んでかえってブローホール発生の原因になる。

・風がある場合は、トーチ近傍の風速が2m/s(秒)以下になるように適切な防風対策をして溶接を行う。

・ノズル内面にスパッタが付着するとシールドガスの流れが乱れ、ブローホールの原因になるので、ノズル内面に付着したスパッタは溶接作業中頻繁に除去する。

・適切なノズル・母材間距離を保って溶接する。

[7]スラグ巻込みの発生原因とその防止

 スラグ巻込みは、溶融スラグが浮上せずに溶接金属中に残ったものです。

その防止対策には次のようなものがあります。

①前層および前パスのスラグを十分に除去する。

②スラグが先行しないようにする(とくに立向下進溶接の場合など)。

③多層溶接の場合、前層や前パスが凸状になっている場合は、次の層または次のパスを溶接する前に凸状の部分を削って形状を修正する。

④ビードの積層で、ビードとビードの間、またはビードと開先面の間に鋭く深い凹み(谷間)を作らないようにする。

⑤適正な運棒、棒角度およびウィービング法で施工する。

[8]融合不良の発生原因とその防止

 ビードと開先面、ビードとビードが溶け合わずに接触しているだけ、または隙間ができている状態を融合不良といいます。マグ溶接ではコールドラップと呼ばれる融合不良が発生しやすいのでとくに注意が必要です。

融合不良の防止対策は次のようなものがあります。スラグ巻込みの防止対策と同じものが多くみられます。

①開先角度が狭いと発生しやすいので、適切な開先角度にする。

②十分な溶込みが得られる適切な溶接条件で施工する。

③前層、前パスや開先面が十分に溶けるような運棒、棒角度およびウィービングで施工する。

④多層溶接の場合、前層や前パスが凸状になっている場合は、次の層または次のパスを溶接する前に凸状の部分を削って形状を修正する。

⑤ビードの積層で、ビードとビードの間、またはビードと開先面の間に鋭く深い凹み(谷間)を作らないようにする。

⑥溶接中、溶接金属が開先部を先行すると発生しやすいので、溶接金属先行が生じないような条件、運棒、棒角度で施工する。とくに溶接速度が遅い場合に溶接金属が先行しやすいので注意が必要。

[9]溶込み不良の発生原因とその防止

 溶込み不良は、開先ルート面が溶けずに残っている欠陥であり、その防止対策には、次のようなものがあります。

①適正な開先形状にする。開先角度は狭すぎる場合、ルート面は大きすぎる場合、ルート間隔は狭すぎる場合に溶込み不良は生じやすい。

②裏はつりを行う場合は、ルート面を残さないように十分な深さまで掘る。

③アークの狙い位置が開先ルート中央からずれないようにする。自動溶接では、開先倣いを取り付けるなどして狙い位置のずれ防止をする方法がとられることが多い。

[10]アンダカットの発生原因とその防止

 アンダカットは、溶接ビードの止端に沿って母材が掘られ、溶接金属が満たされないで溝状に残った欠陥です。

その対策には、次のようなものがあります。

①過大電流を避ける。

②速すぎる溶接速度を避ける。

③適正な溶接棒狙い位置、角度、アーク長で施工する。

④ウィービングを行う場合には、ウィービング両端で適切な時間停止するなど、ビード止端部での溶接金属不足を防止するような運棒を行う。

⑤下向姿勢は他の姿勢での溶接よりアンダカットが発生しにくいので、できるだけ下向姿勢で施工する。

⑥多層溶接の場合は、仕上げ層の溶接条件にとくに注意する。

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溶接欠陥の除去と補修

 補修溶接を行う場合には、一般の溶接と比べて以下のような違いがあることに留意して施工する必要があります。

・局部的な溶接が多いので、一般に拘束が大きい。溶接後の冷却速度も速い。

・溶接姿勢が制限される場合がある。

・作業環境が厳しい状態(高所や狭隘な場所など)での施工が多い。

・自動溶接機、半自動溶接機が持ち込めない場所で、被覆アーク溶接棒による手溶接でしか施工できない場合がある。

・すでに使用されている製品で容器やパイプの補修の場合には、内部の気体、液体などを完全に取り除いてからでないと補修溶接にかかれない。

・製造されて長い年月の経っている製品の場合には、図面、仕様書、溶接施工要領書などが残っておらず、母材の材質等が不明のこともある。

・補修溶接は、一般に製作時の(元の)溶接の場合より、高度な技能、施工能力が要求される。

[1]補修計画、補修要領

 まず補修工事の計画を立てる必要がありますが、その際には次のようなことを考慮して検討しなければなりません。

①すぐに修理する必要があるかどうか(すぐに修理しないと重大事故になるかどうか)。あるいは、いつまでに修理すべきか。

②使用中(供用中)の製品なのか、まだ製造中の製品なのか。

③補修する溶接部に適用された溶接施工要領書、図面、仕様書などを入手し内容を確認する。

④欠陥の種類、発生位置、大きさおよび発生原因の把握または推定。

⑤補修する場所、作業環境の確認。

⑥欠陥が発生した継手以外の継手にも同じような欠陥が発生していないかの確認。

以上のようなことを検討後に、補修溶接要領書、補修後の検査要領書などを作成する必要があります。

補修溶接要領書作成にあたっての主な注意点は以下のような点です。

①低水素系溶接棒、マグ溶接などの水素量の少ない溶接材料あるいは溶接法を採用する。

②母材の種類や製作時の溶接要領書をよく確認し、溶接材料を選定する。

③予熱が必要な場合には、製作時の溶接の予熱温度より高い予熱温度を設定する。

④低温割れが生じやすい継手の場合は直後熱を採用する。

[2]欠陥の除去

 除去すべき欠陥は、適切な非破壊試験法によって、その長さ、深さなどの範囲および位置を確認した後、グラインダ、エアアークガウジング、またはその併用などの方法で除去します。割れのような欠陥で、除去作業中に欠陥が伸張するおそれがある場合には、欠陥の両端部外側にストップホールをあけてから除去作業にかかります。

 欠陥が完全に除去されたかどうかを目視検査およびMTまたはPTなどで確認します。欠陥除去後は溝を開先状に整形して、補修溶接しやすい形状にしておくことが重要です。

[3]補修溶接の施工注意点

 補修溶接は作成された補修溶接要領書に従って行うが、それ以外の施工上の注意点は次のようなものがあります。

①製作時の溶接施工と同等以上の技能資格保持者で、技能レベルが高い技能者に施工させる。

②熱影響部が硬化しやすい母材の場合には、テンパビード法、ハーフビード法などビード積層方法を工夫する。

③作業環境(安全衛生、作業性など)を整える。

[4]補修溶接の検査と補修記録

 補修溶接の完了後、溶接部の目視検査および適切な非破壊検査を行い、欠陥が除去されていること、再発していないことを確認します。遅れ割れの可能性がある場合は、溶接完了後24~48時間後に非破壊検査を行う必要があります。

補修工事およびその結果は補修記録として文書で残します。

 

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