4-3)センサ

位置、変位センサ

・接触、非接触で物体の距離や変位を計測する

・測定対象の表面状態でセンサを選定する

・変位センサは周囲温度の影響を受けやすい

 位置・変位センサは、対象物の有無や検出体がある位置から他の位置へ移動したときに、その微小移動量を検出する装置です。

 液面など絶対的な位置を検出する位置センサ、回転軸の振れや基準面に対する高さの差分のように相対的な距離の変化を検出する変位センサ、軸の回転数や角度変化を検出するロータリーエンコーダなどの種類があります。

 変位による物体の検出方式には、機械式・静電容量式・磁気式などがありますが、現在はレーザ方式が主流となっています。レーザ方式の変位センサでは、センサの光源から発したレーザ光が、対象物に当たり反射した光を受光素子で捉えます。受光素子に入光する位置情報を元に、距離に換算しています。このようにレーザ方式では、非接触でセンシングすることができます。

 変位センサの多くは、周囲温度の影響を受けて温度ドリフトが発生します。これは、同じ距離であっても周囲温度の変化で計測結果が異なる現象のことです。センサ自体の熱膨張・収縮や空気の座屈率が変わることによって、投光・受光経路が変化するために生じます。したがって、僅かな変位を測定する場合には、電源投入してから機器内部の温度が安定した後で使用することが重要であり、冷却ファンなどの風を直接あてない、といった配慮が求められます。

 ひずみゲージは、100万分の1の微小な変化を検出できる素子です。

 ロータリーエンコーダは、スリットが設けられたディスクが回転軸に固定されており、そのスリットを光が通過する信号を受けることで、回転角を検出します。ロータリーエンコーダの選定ポイントは、使用する種類によって、電源立ち上げ時に原点復帰の要否、分解能や軸の許容荷重などが異なるため、よく確認し、目的に応じたセンサを選定することです。

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速度、加速度センサ

・ものの動きを検出する

・速度センサは正面から測定

・加速度センサは測定対象の数倍を選定

 一般的に、速度・加速度センサは移動体の相対位置を検出する方法と、移動体の内側、または外側から検出する方法があります。

 速度センサは、※ドップラー効果を利用した計測器です。レーザ光や超音波などを測定対象に当てると、測定対象物の速度に比例して反射波の周波数が変化する原理を応用して、速度を検出しています。反射波を検出して計測することから、測定対象物の表面状態に応じて検出方式を選択する必要があります。

 また、測定の原理から、対象物の移動方向と送受信波の角度を小さくしておくと、精度の良い計測結果が得られます。

 加速度センサは、傾き・動き・衝撃などの検出に利用されています。加速度センサの検出方式は、静電容量・ピエゾ抵抗・熱検知などさまざまですが、現在は静電容量方式が主流となっています。

 静電容量方式加速度センサでは、加速度によるおもりの変位を静電容量の変化で検出します。センサ部には微細な形状が形成されていることから、加速度センサは※MEMSセンサを代表するもののひとつです。

 加速度センサを選定するときの観点は、検出したい軸数と加速度の範囲です。

 軸数とは、対象物の動きのことで、直線的な運動を1軸、平面内の運動を2軸、立体的な運動を3軸と呼びます。

 加速度の検出範囲は、一般に重力加速度gと比較して、±3gなどと表されます。例えば、機器の傾きを検出する場合には数gまでのセンサを用いることで、小さな加速度範囲の検出精度が高まります。また、自動車の衝突などの検出には数10gのセンサを用いて、大きな加速度発生時の誤検出をなくします。

 このように想定する加速度の数倍程度のセンサの選定が適切です。

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ドップラー効果

物体(音源)が等速で動いている場合、物体の前方の周波数は上がり、後方は下がる。救急車の音が通り過ぎた後に低く変わって聞こえるのがこの原理です。

MEMS

MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの頭文字を取った略語です。具体的には、半導体プロセスを応用して、シリコン基板表面に積層と除去加工を繰返すことで作り上げられるミクロン単位の機構部品のことを指します。半導体との大きな違いは、MEMSが可動部分を持つことです。熱・電気・磁場など外部からのエネルギーを与えて、この可動部品を変位させることにより、インクジェットのプリンタヘッドや熱センサ、加速度センサなどに応用されています。

力センサ

・機械的な力の変化を電気的に計測する

・機械と電気との融合で精密計測ができる

・大きさや形状で検出方式を使い分ける

 力を検出するセンサには、ひずみゲージを用いたロードセル、※ピエゾ抵抗効果を利用した圧電素子、そして軸の回転速度や入力電力から間接的に力を検出するトルクメータなどがあります。

 ひずみゲージは、ロードセルのたわみに応じて伸縮します。この伸縮によりひずみゲージ内に形成されたジグザグ状電路の抵抗値が変化することで、ロードセルにかかる力を検出しています。単純な構成のため安価であり、広く採用されています。また、寸法・材質の明らかな梁にひずみゲージを取り付けた測定も可能です。

 圧電素子は、水晶や特定の種類のセラミックスなどに圧力を加えることで生じるひずみに応じて、電圧が発生することで、力の大きさを検出できます。この圧電素子を利用した身近なものとして、ライターの着火石があります。圧力を加えて高い電圧を発生させることで、火花を発生させ、ガスに着火します。なお、圧電素子に電圧を印可すると寸法が変化する逆の作用を利用して、微細位置決めにも適用できます。

トルクメータでは、トルク(T)と※慣性モーメント(I)と※角加速度(α)の関係が

 T = I ・ α  となることと

角加速度が角度(θ)を使って

 α = d2θ/dt2  

で表されることから、回転軸に設けた歯車などで回転角を測定しています。

また、モータであれば電力(P)とトルクの関係が

 P = T ・ t =V ・ I

で表されることから、電圧や電流値からトルクを算出しています。

 このように力センサは、電気との融合により実現しています。

 さまざまな種類の力センサがあるため、測定対象の大きさや形で使い分ける必要があります。

 

ピエゾ抵抗効果

ピエゾ抵抗効果は、応力によって起こる分極 現象であるピエゾ効果とは異なり、抵抗に加わ った応力によって電気導電率すなわち抵抗率が 変化する現象です。 この現象は、加わった応力により結晶格子に 歪が生じ、半導体中のキャリアの数や移動度が 変化するため起こります。

慣性モーメント

 慣性モーメントとは、物体(剛体)の回転のしづらさ、回りだす変化のしにくさを示したものでアクチュエータの選定時にとても重要です。大きな物体を回転させるには、大きな力が必要であり、逆に小さな物体を回転させるには、小さな力ですみます。つまり、回転体に回転トルクをかけたときの回転の難易さを表すのが慣性モーメント(=イナーシャ)です。加減速時のトルクはイナーシャの大きさに比例するため、イナーシャが大きな機械(負荷)のときは、アクチュエータの容量も大きくなります。

角速度

ある点をまわる回転運動の速度を、単位時間に進む角度によって表わした物理量をいいます。

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